第54回 お見舞いマナー (2002/03/06)
入院生活も長くなるとそのぶんいろいろな経験もする。健康な人の生活の中ではごくどうということのない行為が実は病人にとってとんでもない迷惑になることがある。
1.風邪をひいてお見舞いにこないで。
健康人にとってはちょっとした風邪でもうつされれば病人にとっては致命症になりうる。会う前にはうがいぐらいしてほしい。
2.廊下を歩くときにはゆっくりと。また突然たちどまったり、方向を変えないでほしい。
病人はやっとのことで歩いているので早く歩いてくる人はこわい。また突然の変化についていけないので急なフェントはルール違反だ。
3.廊下で立ち話をしないで。
立ち話はたいてい壁側に寄ってされているが、病院の廊下の壁には手すりが付いていてそれをたよりにやっと歩いている病人も多い。ひまそうな見舞い客が壁に寄りかかっていたりすると、うんざりさせられる。
4.食べ物をもってこないで。
患者にもよるが食事を制限されている場合がある。糖尿病患者にチョコレートをもってこられてもこまる。お礼だっていいたくない。また他の患者さんのお見舞いのおすそ分けに自作のクッキーなんかを同室の患者に配っている人もいたが、ありがた迷惑どころか悪魔の使いのように思った。
5.バランスをくずしやすい変な格好をしないで。
標準的な病室は6人部屋で、ベットはカーテンで仕切られている。一人のスペースは広くはない。何人かでお見舞いに来た場合、簡単に場所を入れ替わったりすることはできない。バランスを崩して寝ている病人の上にでも倒れたら大変なことになる。ハイヒールは見ているだけでこわい。
6.トイレは不便な場所を使って。
病人のために入り口の近くや、手すりのあるトイレはあけておいてほしい。また、見舞い客の連れションはやめてほしい。病人には立って待っているものつらいのだ。基本的には入院病棟でのトイレは遠慮すべきだ。
7.長電話はやめて。
電話の脇の腰掛けは空けておいて。普通だって電話が空くのを待っているのは長く感じるものだが、病人の場合は立って待っているのもつらいのだ。見舞い客の人たちに椅子を占有されていたりするとたまらない気持ちになる。
8.寝ているときは起こさないで。
せっかくお見舞いにきたのだからといって、寝ている病人を起こさないでほしい。病人にとって睡眠はとても大切だ。睡眠のリズムを狂わされるのは後に尾を引いてつらい。目を覚ますまで待っか、時間がなければメモを残してほしい。起きたら見知らぬ花だけ置いてあるというのも何か落ち着かない。
9.病状をあれこれ聞かないでほしい。
聞かれても話したくないことや思い出したくないこともあるのだ。病人が自分から話すことだけをそのまま聞いてほしい。病気のウンチクを長々たれたりされると疲れる。とっておきの情報やお勧めの薬などあってもさりげなくお願いしたい。病状やお勧めの詳しいことは本人にではなく家族に話しておいてほしい。
10.宗教の話はやめてほしい。
宗教はもともとアクが強い。自分の信仰している宗教ならいざしらず、教義や奇跡をながながと話
されるのはウンザリする。一緒にお祈りしましょうなどと唱和を薦められても困る。
11.メールをください。
病気の話題は重いのでメールしずらいかもしれませんが、ちょっとしたメールがとても嬉しいものなのです。何度も読み返しています。内容は病気のことよりありきたりの日常の出来事などがいいです。病人にとって日常の情景は一種のあこがれでもあるのです。返事は書けないかもしれないけど、そのときはごめんなさい。
お見舞いに来る人は、みんな悪意はないし、むしろ善意で行動している。結局はデリカシーの問題なのだ。長く入院していると教えられることも多い。
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