第52回 雑事 (2002/02/22)
今日、心臓バイパス手術を担当していただく外科の先生に初めてお目にかかって診察をうけた。老い過ぎず若過ぎずで、外科医としてはちょうど脂の乗り切った頃合いの先生だった。
これまでの検査結果はすでに点検済みで、いくつか簡単な質問をうけただけだった。足のやけどの治り具合を見て、「もう少し傷がしまったほうがいいのだが」と、感染症を気にしている様子だった。糖尿病は免疫力を低下させ、傷の治りがわるく感染症にかかりやすくなる。
手術の日程に関しては、血糖コントロールのことを考えて、このまま転院してできるだけ早くしていただくようにお願いした。定例の手術は毎月曜と火曜ということで3月の10または11日で調
整することになった。予想よりも遅い展開で半月ほど先になるが、足の傷のことを思えばそのほうがよいのかもしれない。
もちろんこの日程も確定したわけではないが、いずれにしても手術が必要なことにはかわりなく、その重大さを考えれば細かい日程は気にすべきではないだろう。すべてを自然にゆだねるのが最良に思う。
足の傷もあるていど癒え、糖尿コントロールも安定しているので、本来ならばもう退院していてもおかしくないのだが、心臓の手術を前にして、家に帰って食事や時間など生活が乱れるのがまず
いので今は居座り入院のような格好になっている。ほかの人のことを考えると早くベッドを開けなければとすこし気まずいのだが。
とりたてて近々の診察や治療の予定はないので、外出したり、本を読んだり、息子に英語を教えたりしている。テキストはいま話題の「世界が100人の村だったら」というインターネットフォ
ークロアをつかっている。内容もおもしろいが、関係代名詞や仮定法がふんだんに使われているので勉強には最適だ。
また、いままで書いた日記をCD-ROMにまとめた。題字やレイアウト、CD製作は息子に担当させ、ホームページの作り方や画像処理のしかたを基礎から教えることができた。これは自分にとっても息子にとっても今度の入院の最大の成果のひとつといえるだろう。
健康で仕事に明け暮れていたらそれが中心になって、外出や読書、勉強を教えたりすることは、時間がなければパスしてしまう「雑事」になるのかもしれない。しかし長い入院を必要とする病気をしてみて、そんな雑事が実は仕事と同じくらい大切なことかもしれないとあらためて思った。
シャーロック・ホームズ曰く。事件を解くには「些細でつまらないことほど重要なのだ」。生きることでも同じかもしれない。
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