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病の細道

 

第40回 心臓カテーテル検査 (2002/02/02)

 

8日前、心臓カテーテル検査を受けた。結果が芳しくなかったこともあるが、かなり過酷な検査だったので体調も落ち着かず、しばらくは思い出したくなかった。しかしやっと体調も安定してきて少し冷静になって考えられるようになってきた。

心臓カテーテル検査は、血圧や血液、心電図、レントゲン検査のように気軽に受けられるものではない。血管に造影剤を注入して写真を撮るという点に関しては眼底検査と似ているが、カテーテルという管を直接体内に入れるので検査というより一種の手術といっても大げさではない。

同意書ばかりか家族の付き添いも求められた。
検査そのものは午後3時からだったが、準備は前日からはじまる。検査中にトイレに行きたくならないように大便を出しておかなければならない。当日の朝はいつも通りの食事だったが、それ以降は絶飲食で安静にして歩行禁止。

1時過ぎから左手に点滴がはじまる。カテーテルは心臓に到達しやすいように右手から入れるから、点滴は左手からということになる。3時過ぎに検査室に呼ばれ、車椅子で移動した。

扉が開くと、そこは別世界。まるで宇宙船の司令室のようだった。大きな機械が並べられ、何台もの大きなモニターが置かれていた。天井のレールにはレントゲンの撮影機が吊り下げられていた。細菌の繁殖を抑えるためか室内はすこし寒かった。

検査台にのると胸に電極が付けられ、スピーカから「ピッ、ピッ」という心臓の鼓動が聞こえてきた。「これが自分の心臓の音か」。目をつむり自分の何億回目かの鼓動に聞き入った。たまに不整脈が混じるのがわかる。それだけに一層いとおしかった。

右腕がまっすぐに固定され、消毒後、麻酔が注射された。麻酔は腕の部分麻酔で意識はそのままだ。いよいよ正中(ひじの反対側)の血管からカテーテルが挿入された。一瞬心臓がびっくりして鼓動が乱れた。緊張が一気に高まった。身動きもできず、緊張で時間が経つのが遅い。カテーテルを
映し出すモニターは胸部の撮影機の影で見えない。というより緊張で見ている余裕もなかった。鼓動音だけが不安げに響き続けた。

やがて心臓に到達したらしく、造影剤が注入され胸が熱くなった。撮影機械の角度をかえる度に聞き覚えのある移動音と振動がした。どこで聞いた音だろうか? しばらくしてジェットコースターの登っていくときの感覚だと気が付いた。楽しむというほどの余裕ではなかったが、すこし緊張がほぐれた。

撮影が終わり、寝たままストレチャーに移され、別の部屋に移動した。天井だけを見ていて移動していくとこれも独特な世界だった。しかし移された部屋にはたくさんの資料やカルテ、備品などが置かれ物置小屋のようなところだった。一気に現実に引き戻された。

看護婦さんがカテーテルを抜いていると医師がやってきて「酒タバコはやるか」と聞かれた。「やらない」と答えながら、今さら何でと少しイヤな予感がした。

約1時間15分後にベットに戻った。右手には曲がないようにコルセットがはめられ、左手には点滴が入れられている。看護婦さんが頻繁に血圧を計りにきて、手にしびれはないかと聞く。ちょっとでも異常を感じたらすぐ呼ぶように念をおされた。

夕食は普通通りだったが、右手は曲げられないので使えず左手とスプーンで食べた。夜中、点滴はつづけられた。右手を曲げられるのを許されたのは次の日の朝だった。

数日すると、カテーテルをいれた右腕に大きなアザがでてきた。腕を締め付けたためにできるものでこの検査ではよくあることだという。1ヶ月は残るのではないかともいう。このアザを見るたびに、できればもうやりたくない検査だなと思うが、心臓病におけるこの検査の重要性を考えればこの程度のガマンはしかたないとも思う。

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