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病の細道

 

第39回 痛み (2002/02/01)

 

「痛み」とはいったい何だろうか? どのようにして痛みは現れるのだろうか? 

自分が経験した痛みのベスト(ワーストというべきか)スリーは、痛風、歯痛、四十肩だ。そのほかにも胃けいれんや手の中指の爪をはがし失神したこともある。

痛風は足の指や足首の関節に尿酸がたまって腫れあがり神経を圧迫しておこる。本当に痛い。やがて尿酸が流れて痛みはなくなるのだが、それまでの3日間ぐらいは寝れないほど痛みは続く。脈にあわせて痛みも鼓動し、文字通り風が吹いただけでも激痛がはしる。20台後半これが3ヶ月間隔で3年ぐらい続いた。

歯痛はだれでも経験するところだが、痛風の痛みと違い痛みの程度はやや鈍いが継続的に病むからとてもつらい。救われるのは歯医者に行けばなんとかなることだ。眠れぬ夜を耐え、朝一番の病院にたどりつくととりあえずホッとする。

四十肩の痛みは継続的ではないかわりに、腕を動かした時などに電流のような激痛がはしる。普通にしているとあまりたいしたことはないのだが、この状態が年単位で続くから生活を変えざるを得なくなる。しかも、両肩が同時になることは少ないらしく、片方が癒えてきてやっと
安堵していると、今度は別の肩に移って痛みが再開するのだからイヤになる。

オスカー・ワイルドは「歯痛のなかにも快楽はある」などと書いているらしいが、わかるような気もする。本当は、痛みは実際に痛んでいるときに本人にしか実感できない。痛みそのものを思い出すことや想像することはできない。それだけに痛みは貴重な体験でもあるのだ。

痛みは、状態であって、ストレスと同じように細胞や物質のような実体がない。確かに患部に血液がうっ血して神経を圧迫して起きるのが主因だろうが、例えば、事故で不幸にして手足を失った人でも感覚的に足の先が痛いと感じることがあるらしい。痛みといってもいろいろあるわけだ。

「苦痛」という言葉はあるが、「楽痛」という言葉はない。とすれば痛みは感じないほうがよいのだろうか?
糖尿病には神経障害という合併症があり、痛みや温度が感じにくくなる。自分は足先の温度感覚が鈍いため、今回大やけどを負ってしまった。だが、幸いといえるかどうかわからないが、痛みの感覚も鈍いので傷口は結構深いのだが痛みはほとんど感じない。心筋梗塞も起こしたらしいが痛みの自覚症状はなかった。

痛みのない世界というのも奇妙なものなのだ。

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