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病の細道

 

第31回 ハートビート (2002/1024)

 

朝起きたら少し落ち着かない。今日、心臓のカテーテル検査がある。

自分の中には爆弾があるらしい。心臓だ。入院したときは文字通り心臓がひっくり返ってもおかしくない状態だった。高熱にうなされ、寒さにふるえ、呼吸は浅く、心臓の鼓動は早く、何も食べられない。

レントゲン、血液検査、心電図、さまざまな検査をした。後で知ったところによると、医師が最も心配したのは足のやけどや敗血症ではなく、心筋梗塞だったようだ。心臓が停止すればすべてが終わりだ。

心電図には不整脈があり、血液検査では心臓の異常時に心臓でしか分泌されないといわれる物質に陽性反応がでていた。これは最近1週間以内に心筋梗塞を起こした可能性があることを意味する、とのことだった。

さかんに「胸は痛くならなかったか?」と聞かれたが、自覚症状はなかった。糖尿病の場合、痛みの感覚がにぶっているので無痛の心筋梗塞ということもあるらしい。胸には鼓動を感知するための電極盤が貼り付けられ、コードでむすばれた小型機器からは無線でデータが発信され、24時間監視体制がしかれた。

当初、血糖値は300もあった。通常の3倍以上の高さだ。怪我によっても血糖値は上がるらしいが、それにしても高い。血糖値が高いと血液の粘性が上がり流れがわるくなる。その結果として心臓への負担が大きくなり、心筋梗塞を起こしやすくなる。

当面は、敗血症とやけどの傷口の治療、血糖値の管理を優先させなければならないが、安定したらいずれは心臓のカテーテル検査が必要だ、といわれた。

やっとその日がやってきた。心臓のカテーテル検査というのは、腕から血管をとおして心臓までカテーテルをとおし、造影剤を注入してレントゲン撮影をする。心臓の血管の状態が鮮明に浮き出され、血管の閉塞状況が一目でわかる。この検査結果で今後の治療方針が決まるのだ。

心臓の鼓動、ハートビートは1分間60〜100回くらい。80回とすると10分で800回、1時間で4800回、一日では115200回。1年では4200万回、自分の生きた54年では22億7000万回。ものすごい回数だ。

本当にご苦労さまとしか言いようがない。いつも意識されることもなく、黙々と働き続け、生命を支えてくれる心臓。いまほど君のハートビートを感じるときはない。


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