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病の細道

 

第24回 ストレス (2002/01/17)

 

入院して制限された生活を送っていると、ただボーっとしていればいいのだし、出来ないことは無理したって出来ないのだから出来ないことに対してもあまり気にならない。本屋に行って本を買ったり、インターネットでWebを見たり、仕事をやったり、したくても最初から出来ないとわかっていることはストレスにもならない。

でも、昨日、とんでもないことからイライラしてとてもストレスを感じてしまった。直後の血糖値測定では最近では高めの数値がでるし、血液中の酸素濃度を示す数値も低下してしまった。心臓の動機もいくぶん増えたような気がした。

ストレスといっても実にたわいないことが原因だった。公衆電話からメールを送信しているときにテレフォンカードが切れてしまったのだ。予備のカードはないし、入院中なのでお金の持ち合わせもない。東京に送らなければならないプログラムも送れなくなってしまった。少々あせった。

いつもは3時ころに妻が見舞いにきてくれるので、それからにすればいいやとあきらめた。ところが3時になっても、4時になっても、5時になっても来ない。数日前から体調をくずしていたので具合が悪くって来れないのかもしれない。

妻の体調も気になったが、それよりテレフォンカードを手に入れる見込みが立たないことに途方にくれた。テレフォンカードの予備が一枚あれば、千円が一枚あれば、10円でもいい、と思うと、それがないことがとてもイライラしてきた。

理性的に考えれば、しばらく電話ができないことは別にどうということはない。場合によっては病院に相談することだってできる。でも何かおさまらない。来る人が来てくれない、という期待はずれが気持ちのいらだちを倍加させた。

しかしよく考えると、こうした事態が予想できなくって、前もってテレフォンカードの予備を購入しておくことまで気が回らなかったことに腹が立ってきたのだ。

普段、システム設計などをやっているせいか、ありきたりのつまらないバグを見落とした気分なのだ。込み入って難しいところでバグがでるのはしかたかない。むしろそうした場合はファイトがでるのだが、つまらないケアレスミスによるバグは本当に疲れてストレスを感じる。

ストレスとはそんなものなのかもしれない。最初から出来ないことがわかっていることが出来なくってもどうということはない。出来るはずのことが出来ないときに、または思うようにならないときにストレスを感じるのだ。

ストレスとは誠に奇妙なものだ。細菌やウイルスのようなものでもない。そもそも分子や細胞のようなものから構成される物質や生物でもない。いったいストレスとは何なのか? 
磁場のようなものなのだろうか、それとも空間の歪みのようなものなのだろうか?

昨年のクリスマスにジャック・マイヨールが首吊り自殺したことを最近知った。素潜り世界一。海のブルーを最もよく知る男。最高の心肺機能を持つ男。そんな彼がどうして自殺したのだろうか。解説には、「孤独」というストレスが彼を自殺に追いやった、と書かれていた。

ストレスをコントロールする良い方法はないものだろうか?


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