インド・カルカッタ (37)
「なんだ吸わないのか、美味しいのに。」
同じようにげんこつの中にガンチャを挟み込んで一服した後次の子に回しました。
「は、は、は、は、は、は。」
池野さんが笑い出しました。目見ると熱っぽくトロントしてます。
ガンチャの独特の匂いがデッキに充満し始めました。
ここは、ミリタリー車のデッキです。
ドア一枚向こうにはインド陸軍の兵隊が。
くそったれ、こいつらどうしたんだ。捕まったらどうする!
「暑いから窓あけます」
葉っぱ楽しんでいる6人から離れてデッキの反対側の窓を開けて風を入れました。
煙が少し外に出てにおいが薄れました。
ドイツの女の子はパーティには参加していますが弛緩した表情でぼーっとしています。
よくしゃべって笑っているのが池野さんとイギリスの女の子二人です。
高田さんは恵比寿さんの30歳代はこんな感じの表情で下向いてにこにこ笑っています。
捕まるのはいやだ。
「眠くなったので、寝ます」
スリーピングバックをリュックから引っ張り出し潜り込みました。
デッキの反対側にいれば吸ってないこと思ってくれるんでは。甘いかな。兵隊に捕まったときこちら側に一人で寝ていればたぶん罪にはとらわれない、か?
だけど、このメンバーの中で言葉が一番不自由なのはこの私だ。どう説明する。最悪です、心配事が次から次と湧いてきます。胃が痛い。口がからからになって来ました。
俺は吸ってない、俺は吸ってない
デッキの隣はトイレでした。
何回も足音が近づいてきて、トイレのドアを開ける音がして。
そして足音がまた遠ざかって。
幸いまだデッキまで誰も来ません。
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