インド・カルカッタ (36)
「たまたま日本と同じ程度の経済力の国があったとしたら、普通の人同士がうまく会えば交流できるかもしれんけども、インドではまず無いよ、アジア諸国でもないよな、俺らの世界は俺ら、現地の人は現地の世界があって交わらんよ、お互い自分の世界から眺めりゃいいじゃん。無理して合わせる事ないし。」
「眺めるのが旅行の第一歩だし、よそ者は眺める事しかできんし、それ以上参加はできんよ。」
いや、ブーアスティンという人の書いた「イメジの時代」には観光客と旅行者が分けて書いてあってと反論しようと思ったのですが、やめておきました。これ以上、ボンボンへこまされたらすぐには立ち直れそうにはありません。
黙り込んだ私を見て、高田さんも潮時かなと思ったようです。
「ま、そいうこっちゃ、と言っても旅行中色々な奴に会うのも楽しい事は楽しいし、どうでも良い事だけど。」
「そうですね。」
かすれた声でそう返事するのがやっとでした。
「おっ、嬉しそうな事やってんじゃん」
そう言って高田さんデッキの反対側を見ました。
池野さんと女の子達、ガンチャを回しのみしています。
「こっちにも一服くれる。」
イギリス人の女の子から、ガンチャもらうと高田さん握り拳の真ん中にガンチャを握りげんこつの親指側を口の方に持っていって一気に空気を吸い込みました。
「スウッッ、ウッッ、スウッッッ」
吸い込んだ後、肺の中に空気をため込んでいます。
無言で高田さんガンチャをこちらへ差し出しました。
私はタバコを吸いません。ガンチャもバンコクでも吸ってません
「吸いませんからいいですよ。」
「ぷはーーー。」
息吐きながら、高田さん池野さんへガンチャ手渡しました。
<<前のページ 次のページ>>