インド・カルカッタ (18)
パトナヘは夜の9時半発でした。市電でチョウロンギーからハウラ駅へ向かいました。時間は余裕もたせて、8時前にモダンロッジを出ました。今日は荷物かついで歩いてみました。サルベイションアーミーの横通ってインド博物館、その前のチョウロンギーの市電の停留所まで、何とか歩けました。足の具合は少しは、よくなってきたようです。
カルカッタはどこへ行っても人の波です。バスもそうだし、市電の中も混雑していました。こういう人込みの中では足踏まれないようにするのが大変です。一気に電車の中に突入真ん中に陣取りました。ハウラ駅では人がたくさん降りますから真ん中が一番いい場所のはずです。
もちろん、まわりの人が快く場所あけてくれるなんてことは北部インドでは(正確には東部ですが)特にカルカッタではありえません。荷物を体の前に抱えそれを盾にぐいぐい押し分けていくのです。高田さん目の細い典型的なモンゴロイドの顔で、ずんぐりむっくり、ひげずら、顔半分には事故の後遺症のケロイドの跡があります。しかもヨーロッパでは柔道の先生していた男です。
彼が先頭、私が真ん中、池野さんが最後、周りから痛いとか押すなとかの文句が出ていたと思います。言葉わかりませんし、現地の人だってもっと強引な乗り方する人だっているわけですから同じようなもんでしょう。
「財布気をつけてよ、スリ多いから、前にカルカッタきたときスリにやられそうになったことあるから。」
高田さん注意してくれました。
私に関しては、バンコックの水上マーケットの詐欺以来、その日に使うお金だけをズボンのポケットに入れてあります。それ以外の外貨とか高額紙幣は腹巻きの中です。
「大丈夫です、金その日に使う分しかポケットに入れてません。だいたい財布持ってません。」
いつも裸銭でポケットに入れてます。
「そうかそれならいいけど、俺後ろのポケットにたまたま入れていて今日より混んでた電車だったけど、ポケットに手入れて来る奴がいるわけ。とっつかまえて警察に突き出すのも面倒だし、関節技かけてやったのよ。」
「男の手だったな、手首右手で固めてそのまま体重かけてやった、指先はポケットで固定されてるし逃げようがないじゃん。グキッと音した。」
「さすがプロだな、声出さなかった、そのまま手はするっと周りの人込みの中に消えて誰がスリだかわからんかったな。痛かったんじゃないのかな、手首ぷらぷらだぜ。」
商売とはいえここではスリも楽ではないようです。
電車の外は人込み、人込み、車、人力車、牛、犬、日がくれてますから昼間幅聞かせているカラスはいません。停留所で止まるごとに、押し合いへしあい怒鳴り合い、真ん中にいる私たちは別天地です。
電車はフーグリー川に架かる、ハウラブリッジにさしかかりました。暗やみの中でその橋げたは、黄泉の国への門のように見えました。
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