ビルマ(ミャンマー) (14)
 
「田森さんあんたも飲むか?」 
池野さん声かけてくれました。 私は酒が飲めません。ビールコップ半分でも寝込んでしまいます。何かソフトドリンクをと思ってベンチシートから立ち上がって池野さんの方を向きました。 
「いや私酒飲めないですから、他の物を。」  
池野さんがビール注ごうと思って私にコップ差し出したのと、私が立ち上がって振り返ったのが同時でした。  
私のひじが、池野さんの差し出したコップにあたりました。 
「おっと。」 
「わっ!」 
声は同時に出ました。 コップは地面でガシャと鈍い音をたてました。 寒気のような鈍痛が左足から頭のてっぺんまで伝わっていきました。
 「あいててて。」 
思わず声上げました。  
足下見ると、ガラスのコップが割れて転がっています。左足を切ってしまったようです。  
左足のアキレス腱の内側のくるぶし、そこにすーと斜めに傷が入ってます。左足には力が入りません。ベンチシートに座り左足を持ち上げました。その瞬間ジェットコースターで一気に降下したような無重力感が来ました。頭にはエアサロンパスのスプレーを一本まるまるぶちまけた、ミントの寒気が降りてきました。  
傷は10センチぐらいで深さは想像できません。一気に鮮血があふれてきます。その奥に白い物が見えます。 
「わわわわ、やったやった。」 
池野さんも、高田さんも固まったままです。私も足首押さえてベンチに座ったまま動けません。 
<<前のページ  次のページ>>