ビルマ(ミャンマー) (08)
次の日夜行列車でラングーンへ。日中の長距離列車はこりごりです。夜通し汽車は走り続けました。天空には満月に近い月が上っています。昼間は何にもないカラカラに乾燥した煉瓦の上を走っているような感覚でしたが、夜は月の光で地平線まで大地が白く光っています。雪国を列車が走っていく様な感じです。
高田、池野さんとも、ボーとして窓の外を見ています。どうも、ドラッグをやってるようで目が少しいっちゃっています。規則正しく単調な列車の車輪が出す音と、窓からはいる風の音、白い大地、その上を列車の影絵が高速で滑っていきます。
突然、影絵の窓の光が消えて、黒く長い列車の陰だけが月光の中を移動していきます。列車の電灯が停電で消えてしまったようです。
「アー、ユー、ジャパニーズ?」
通路はさんで反対側の座席の青年が話しかけてきました。
「ヤー。」
暗闇の中で話しかけられてもなー、なんだか気のない返事しかできません。
「テイク、ディス」
缶詰の空き缶と蝋燭をくれました。停電はよくあるようで車内のあちこちで蝋燭を立て灯を点けています。夜行列車の中で何十もの蝋燭の光がゆらゆら揺れている様子は、銀河鉄道の中にいるような不思議な感覚でした。
池野、高田両氏は半眼のまま窓の外を見続けています。もしドラッグやってたとしたら彼らの意識は天空の月の周りを飛び回っていたのかもしれません。
<<前のページ 次のページ>>