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トラベルメイト田森君は西へ

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田森くんは西へ vol.183

 

タイ・バンコク (35)

 

坂田さん一通りインドまでの事を聞き出しました。でも多分、パキスタン航空はインドへ行くときほとんどの人が使わないことは知っていたと思います。一番安いのは私が使う予定のラングーン経由のビルマ航空カルカッタ行き。次にはインド航空ぐらいだったでしょうか。

「ユー、スモーク?」
突然話題が変わりました。

「ノー、ノー」
タイでは、女性でこの頃人前でタバコ吸う人ほとんど見たことありません。

おもむろに、坂田さん缶入りピースを取り出しました。
「デスイズ、グッド、シガレット、」
「グッド、フレーバー、トライ。」
「アイ、セッド、アイ、ドウノット、スモーク。」

女の人の語気が少し強くなってきました。

「ノー、アイ、ミーン、ジャスト、フレーバー」
坂田さん缶入りピースの蓋を開けて差し出しました。 普通私らがやれば、顔が引きつりながら差し出すところですが、坂田さん少しも動じないで自然とピースの缶を鼻先へ持っていきました。パキスタン航空の係員苦笑いしながら嗅いでいます。 缶入りピースの匂い悪くはありません。多分タバコ嫌いの人でも大丈夫でしょう。

「イェス、ナイス」
「アイ、トールド、アイトールド、ヤー!」

この辺りから坂田節のエンジンが掛かり始めました。話は得意のインドネシアの島からパリ、ニューヨークへ、彼は芸術家ですから話す種いくらでも湧いてくるようです。最後に名前もしっかりメモに書いてもらっていました。

「ヤー、ソー、シーユー。」
「オウ、アイ、ステイ、タイソングリート。ノット、ソー、ファー」
「ユー、ステイ、タイソングリート?」
「OH!」

係員、肩すくめて、軽くにらむまねしました。 地元の人から見れば、タイソングリートは得体の知れない外人のたまり場で、決して普通の旅行者が泊まるところではありませんでした。せいぜい真面目な旅行者が泊まるのはアトランタかマレーシアホテルくらいまででした。

坂田さん。芸術家のイメージがもっとあがったようです。

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