タイ・バンコク (20)
「お袋、俺に似て顔立ち割と良い方じゃん。」
と言うよりあんたが、お袋に似てんじゃないかと思います。それに、あんたの顔、女にして老け顔にしてもまあまあかな?
「それもあったとは思うけど、下町育ちだから世話好きで直ぐちゃっちゃっと物やっちゃう方だから、管理人のシャツのボタンなんかとれていれば直ぐ尚してやったんよ。この親父やもめ暮らししてたから一応こざっぱりはしていたけど微妙に女手のないルーズさって言うのが出てたわけ。まあ、それからこの親父大感激、花束もって食事誘いに来たよ。」
「お袋もまんざらでもなかったようだけど、言葉がわからんし、この年代の人、日本では旦那とでもない限り一緒に外へ食事に行く様な習慣無いよな。だから俺に断ってくれと、お袋言うわけ。俺は別に管理人割りと良い奴だし、近所のレストランだろうから行けばと言ったんだけどね。」
「お袋行きたくないと言ってる、と管理人の親父に伝えたら、必死よ、俺を信用してくれ、ただお礼をしたいだけだから、近所の歩いて5分くらいのレストランだから、必ず責任もって食事終わったら送り届けるから。」
「お袋高校生じゃないちゅうのに!」
「どうしても駄目って聞くから、今日は駄目だって言ってると伝えたら、ふーーとため息ついて自分の部屋へ帰っていくわけ。その後ろ姿がよ、両肩ががっくり落ちちゃってこの世の終わりって感じに見えたのよ。」
「可哀想になっちゃってサー、あんまりお世話になってるわけでもないけど。お袋に俺が一緒に行くんだったら飯食いに行くかと聞いてやったんよ。それならお袋も行くと言うから。親父呼び止めて俺が一緒なら、お袋行くと言ってるけどそれで良いかと聞いたわけ。」
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