マレー半島北上 (1)
夕食後車掌がベッド作りに来ました。私は上の段、もう一人の日本人は向かいの下のベッド、子連れのお母さんは私の下のベッドでした。暑いので少しデッキで外見てたのですが、夜、田舎のポツッポツッと電気がともっている家の窓見てるとなんだかすごく寂しくなってきました。
それらは一瞬のうちに視界に入ってきて視界から飛び去って行くのですが、みぞおちあたりに中学生くらいの田舎での記憶を残して行きます。
時には汽車は徐行しながら、裸電球の街灯が点いている踏切を通り過ぎていきま す。
黄色い光の中で、12,3才の男の子が小さな手提げ鞄もって、長くのびた黒い陰の前で汽車が通り過ぎていくのをじっと待ってます。 汽車の窓からの光が、彼の上をコピー機の様にスキャンしていきます。
おい、もう十時過ぎるぜ。
塾帰りなんか!お使いの帰りなんか?
私の意識は汽車から飛んで、陰と男の子の間に移動しました。その前を特急列車はゆっくりと過ぎていきます。私の顔を窓からの光がストロボライトのように照らしながら動いていきます。
あいつこんな田舎で特急列車見ながら何考えてるんだろう。なんだかとっても寂しくなってきました。汽車はまた徐々にスピードを上げ始めました。目の前の家の小さな黄色い窓はどんどん飛び去っていきます。
今日も疲れました、ベッドにはいることにします。デッキの風もかなり涼しくなってきたようです。
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