vol.128 マレー半島南下 (13)
「うー、うー、うー。」
突然枕元で、消防車のサイレンが響きわたりました。でもからだが動きません。必死になってベッドから這い出ようともがきました。
「ううー、ううー、ううー。」
どんどんサイレンが近づいてきます。
早く起きなければ、肘をベッドに当てて反動を付けて起きようとしました。わずかに、頭が動きました。 やっと目が開きました。まだ部屋の中は暗いままです。かろうじて窓がら外の淡
い光が入ってきています。まだ夜が明けていません。何が何だかよく解りません、 音はそのまま続いています。
「ら、ら、ら、ら、らー−−−−。」
サイレンではありません。呪文のような、演説のような甲高い声が、拡声器を通して流れ続けています。 何だよ、まだ朝になってないのに。
声のする方の窓開けてみました。
ブリキ張りの建物のモスクがありました、屋根にはごつい拡声器が取り付けてあります。 火事でなく一安心しました。 10分くらい、コーラン(だと思います。)は続き、
「XXXXXXXXXXX、あっらーあくばる。」
で終わりました。また街は静けさを取り戻しました。 車の音が遠くに聞こえます。犬が何かに吠えかかっています。まだ、起きるには早過ぎるようです。
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