vol.088 ラオス (10)
乗りの悪いにいちゃんです。せっかくめったにないチャンスをやったのに。
中村また目をつむってシーツをひっかぶって、反対側を向いてしまいました。ええよ、別に、頼んでまで見てもらおうとは思ってません。
「わかった、わかった。」
頭、掻きながら私、一人つぶやきました。 そうだ、こうは、しておれません。 早くしないと、第二戦が始まってしまってるかもしれません。
私は素早く四つんばいになるとそっと、しかしできるだけ早く、壁ぎわに急ぎま した。 壁の手前一メートル位までは何の緊張もせずに近づけます。
問題はそこからです。隣の部屋の壁の下の床はすべてが鶯張りのように私には思えました。 移動のため右手を上げると当然その分左手に体重が乗ります。乗ったほうの左の手の下の床が、押されて「ぎぎっ」と音を立てます。
ところが問題はそれだけではありません。場合によっては上げた手のほうの床板が、重さがなくなったため跳ね上がって音を立てることもありました。
一メートルのなんと長いこと。
やっと定位置に腰をおろし、壁に張りつきました。おう、もう第二戦は静かに始まっていました。 最初のころの目が回りそうな興奮はありませんでしたが、今度はそれなりにじっくり観察できそうです。
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