vol.087 ラオス (09)
中村くんは、気持ちよさそうな寝息を立てて寝ています。隣では素人のライブショウのインターバルです。そう滅多に見られるもんではありません。しびれも元に戻ったようです。立ち上がって、中村のベッドの横に立ちました。
「おい、おい、中村、おい、起きろ」
小声で呼びかけながら、肩を揺すりました。何の反応もありません。熟睡しているようです。今度は頬を手のひらで叩いてみました。
「おい中村、ナカムーラ」
反応がありました。
「うん、うん」
必死でなにが起こったか目を開けようとしてますが、目がなかなか開きません。
「ナカムラ、起きろ、隣でやってる、起きろ」
「はーん、うん。」
目は開きました。細かい表情まで暗いため読みとれませんが、目だけが暗闇の中 で光ってます。
「中村、隣やってる、隣」
「へっ、誰ですか?」
彼もここがどこなのか起きたてで解ってないようです。
「何ですか、なに。」
私はもう一度繰り返しました。
「隣やってる。」
「やってるって何をですか?今何時ですか。」
ものすごく不機嫌な声で彼は答えました。
「いま?2時半。それより隣おもろいで!」
「先輩勘弁してくださいよ、まだ真夜中じゃないですか。」
私には決定的な大声に聞こえました。大きな声出したら隣やめちゃうじゃないか!
「シッ、隣に聞こえるじゃないか!」
「隣って何ですか。」
小声で私は強調しました。
「さっきから言ってるやんか!隣やってるって。」
「やってるって何をですか。」
漫才の掛け合いの乗りになってきました。
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