トラベルメイト Top pageワールドフォーラム

田森くんは西へ Index page へ

vol.084 ラオス (06)

声は隣の部屋からでした。寝ぼけた頭にも今なにが起こってるかはっきりとし始めました。  

隣でやってる!  

それから後の私の動きは、伊賀者さえ真似のできないくらい素早いものでした。ベッドから音のしないように降りると、部屋の机とかいすに足を取られないように、暗い中四つん這いになって壁際へ移動しました。  

心臓は早鐘のように動き始めました。壁はもうすぐそこです。ここで音を立ててはすべてがぶちこわしになってしまいます。 ベッドがきしむ音もしています。  

やっと壁に手が届きました。身長に壁に体を寄せ半身になって光が漏れてくるところに顔を持っていきます。まずは一番下の割れ目からです。ベッドのきしむ音とかすれた呼吸音は高くなったり低くなったりしながら続いています。 目の前は旅行鞄のような物がでんと置いてありました。隣の部屋の照明はベッドサイドの電気スタンドが一個ついてるだけでそうは明るくはありません。ここは駄目なようです。  

真ん中の壁板の節目に目を当てました。げっ、もろだ!ほんの壁を挟んで一メ ートルほどの所に隣のカップルの顔が二つありました。  

男は頭のてっぺんがはげた40歳から50歳くらいの小太りのおっさんです。 女の方は30歳後半から40歳くらいの中年女性です。2人とも東洋人です。少なくとも日本人ではないようです。私の好みを言えば、男はドウでも良いとして 女の方はもう少しせめて10歳いや5歳でも若ければと思ったのですが、ここでは私は究極の傍観者です。さらにもう一つ言わせてもらえれば、髪は短髪でちりちりのパーマ掛けてあるより、ストレートで少し長めの方が、でもこの状況では贅沢な話です。  

このままここから覗いているといつかお隣さんと視線が合いそうで不安です。そうなったら恥ずかしいではないですか!一番左側の割れ目に目を当てました。 全体は見えませんが、ここからはほどよい角度と距離でベッドが見渡せます。