vol.083 ラオス (05)
この日はシャワーを浴びるのも面倒で歯磨きだけでベッドに潜り込みました。
安普請の部屋のため隣の住人が帰ってきてがたがた音を立てていたのまでは覚えていますが、そのまますぐ眠ってしまったようです。中村が帰ってきたのも覚えていません。よほど疲れていたようです。
気候はバンコックと比べものにならないくらい快適で、少し涼しいくらいです。 排気ガスもトラックの音もしません。床は木張りののフロアーです。熟睡していたのは2時間ほどでしょうか、真夜中は過ぎていたように思います。目が覚めたのです。のどが渇いたり、トイレのために目が覚めたのでありませんでした。
部屋は真っ暗でした。どこにいるのかすぐにはわかりませんでした。日本の下宿ではないし、香港でもない、バンコックでもない、エーとここはここはどこだろう?真っ暗な天井を見つめながら頭が少しずつさめてきました。そうだここはラオスだった。多分そうだ。
明かりは、隣の部屋との壁の割れ目から漏れてくる三筋の光しかありません。 正確に言えば二つが壁板の割れ目で、もう一つが壁板に使われている節目からのものでした。
首を起こして部屋を見渡しました。隣のベッドからは中村の寝息が聞こえてきます。目を二、三度こすってベッドに体を起こしました。さてトイレにでも行って来るか。そう思ってベッドに座り直しました。それにしてもよく寝ました。あくびを二三回して、腰に手を当てて体を反らしました。頭はぼんやりとですが、
ラオスのホテルに泊まってることを認識したようです。
「はっ、はっ、はっ、はっ、」
かすれた、苦しそうな低い呼吸音が聞こえてきます。 呼吸音に混じって何回かに一回は 「あっ、あっ」と高めの短いフレーズが入ります。
ん? まだ頭はぼんやりとしたままです。 声の聞こえてくる方に体の向きを変え、ベッドの上に座り直しました。
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