vol.065 タイ・バンコク (31) 桟橋に着く
バインダーのポケットの奥にさらにメモを挟んで置くスペースがありました。ここに一万円を日本出るとき挟んで置いたのを思い出しました。帰国したときは、まず台湾から沖縄に着くのですから、そこから神戸までの船の乗船券はあったとしてもお金はやはり一万円くらいは欲しいところです。
旅行途中で使ってしまわないようにしまっておいたのです。何が幸いするかわかりません。これでわざわざ腹巻きからお金を出すような格好が悪いことをやらなくてすみました。
私「これが一万円、テンサウザンド」
胸張って言いました。
ジミー「トムこれが日本のお金で、千円、五千円、一万円となってる」
トム「これ以外に日本はお札ないの?」
私「いや、これ以外五百円がお札だ、昔私の小さな頃は百円もお札だったよ。」
トム「へーそう、ありがとう。」
私は返しててもらったお札を二つ折りにして、バインダーのポケットの中にしっかりと押し込みました。
ジミー「ジャー、そろそろフローティングマーケットへ行こうか、ここから船着き場まで10分くらいだから」
私達はお寺を後にして船着き場へ急ぎました。日は少し西に傾き心なしか涼しくなってきたようです。本当に10分も経たないうちに船着き場に到着しました。
アメリカだとかヨーロッパから来たと思える観光客が船に次々乗っていきます。私はその桟橋へ歩き始めました。
ジミー「ヘイ、そちらじゃないよ。」
ジミーが呼び止めました。
私「えっ、違うのかい」
ジミー「こっちこっち。」
彼は観光客が乗り込んでいく場所から少し離れた、川縁の階段に向かって歩い ていきます。
だっせー。そこには先ほどの観光客用の船に比べたら二回りも小さく、使役用 のボートがありました。車で言えば、エアコン付の二階建てバスと、ぼろぼろの
ビニールシートの商用バンくらいの違いはありました。 船頭もみすぼらしい。
でもまあ専用車みたいなものですから、贅沢は言えません。しかもおごりですし。いかにも観光客然とした乗り物に乗って、観光するより庶民の乗り物に乗って回った方がたぶん面白いでしょう。すぐそう私は気を取り直しました。
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