vol.060 タイ・バンコク (26) フローティングマーケット
「フローティングマーケット、行ったことありますか。」
ハンサムくんが聞いてきました。もう一人の腰巾着くんはにこにこ笑うか頷くだけでほとんど話しません。
「フローティングマーケットて言うのはなんですか?」
私はバンコク滞在2週間近くなるのに本当に知りませんでした。タイのガイドブックは持ってきてはいたのですが、タイソングリートの階層の旅行者が必要とする情報など一つも載っていません。
第一、タイソングリートとか何とか旅社(商人宿)はガイドブックの地図にも、 宿泊の欄にも、元々載ってません。
観光スポットはそれなりに解説してありましたが、無銭旅行風個人旅行の私には、こだわりがありました。そんな場所には、たまたま公共バスが走っていて便利なところ以外は絶対に行かない。観光バスに乗ること自体が私の旅行ポリシーに反しました。観光地で団体観光客と一緒にぞろぞろバスを降りるなんて事は想像だに恐ろしいことでした。
フローティングマーケットもほとんどの団体客が行くコースに入ってましたので、ガイドブックでも観光名所の中に入ってました。だからよけい私はそこは読まなかったのです。
一般的で有名な定番コースでも、安宿でほかの旅行者から教えてもらったり、観光局で薦められて、一般バスとか、普通列車で行けるところならOKでした。たまたま、フローティングマーケットは誰も教えてくれなかったところでした。
「ボートで、川の上、商売人たくさん。」
ハンサムくんが言いました。横にいる腰巾着くんは、彼に合わせて笑うだけでほとんど喋りません。
「彼も日本に行ったことあるの?」
ハンサムくんがまた答えました。
「いや彼は日本に行ったことはない、今彼は学生ではなくビジネスマンだ。」
「コンニチワ、アリガト、」
初めて相づちの「イェス、イエス」以外の言葉を、腰巾着くん喋りました。 ならば私も答えねばなりません。
「サワデイ、カー。マイペンライ。」
「ハッ、ハッ、ハッ」
腰巾着くん笑ってくれました。おとなしい奴のようです。
「水上マーケット行きませんか。案内しますよ。夕方までまだ時間あるからいろ いろ回れるし。」
もちろん私に異論のあるはずありません。モストウェルカムです。
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