vol.057 タイ・バンコク (23) ちょっぴりセンチメンタルになる
私は、両手で筆箱くらいの大きさを作りながらまじめに答えました。
「あそう、それにしても大金だよ。」
体格の良い方が言いました。
「ハードジョブ、ベリーハードジョブ」
万博の徹夜仕事思い出しながら私は答えました。 この辺りまでの話題で、乏しいボキャブラリーが品切れです。結局チェンマイの別荘までの話へは発展しませんでした。まあ、今日は最初の試みですからこれくらいでよしとしなければなりません。
「それじゃあ。」
ベンチから私は立ち上がりました。
「グッドラック」
「サンキュー」
ちょっとしか話してないように思ったのですがそれでも一時間近く経っていまし た。 構内の木々の影は長くのびて校舎の壁に達しています。学校はどこの国でも学校の雰囲気です。日本出て約一ヶ月、まだセンチメンタルになる時期ではありませんが、何故か田舎の高校時代を思い出していました。
夕食の時間までかなりあったのですが、早々とタイソングリートホテルへ帰りました。部屋のベッドに寝転がり、天井で回るファンを見ながらこの一ヶ月を思い出してみました。
何ヶ月も経ってしまったような気がしていました。 神戸を船ででたのはほんの昨日のように思い出せます。沖縄も石垣島も台湾もそ
うです。香港の安宿辺りから今までの出来事がどうもかなり昔の事のように思えます。か なり緊張して旅行始めたからでしょうか。
「ギュン、ギュン、ギュン、キシ、キシ、キシ」
今にも頭の上に落ちそうな音を立てながら、白いファンは回っています。なま暖かい風が体の周りを回っています。 今耳に聞こえている音は、ファンの音だけです。やっと旅行が始まったような気がしました。
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