vol.056 タイ・バンコク (22) テンミリオン
気のよさそうな、お坊ちゃんタイプの2人組でした。ま、とにかくいやそうな顔もせず聴いてくれました。何とか話をつなぎにつないで20分ほど経ちました。
「それでここに来るのにいくらぐらいかかったの。」
体格いい方の学生が聞いてきました。
ここで私はハタと困りました。百とか千はすらすらしゃべれますが、一万円とか十万円は英語でなんと言ったらいいのでしょうか。
船代と航空券でほぼ二十万円必要でした。滞在費に9万円前後、彼はたぶんこ こまでの交通費のことを言ってるのだろうから、二十万円の半分で十万円。一万円は、えーとサウザンドの次は確かミリオンだったような気がします。億万長者にもミリオンが使われていたような気もしますので、単位がかなり上のような気
もします。 ほかの単語がでてきません。
「アー、ウエール、ンーン」
いつまでもうなっているわけには行きません。
「テン、ミリオンジャパニーズ円」
学生の目が点になりました。
「テンミリオン?テンミリオン!」
私きっぱり答えました。
「イエス、テンミリオン!」
間髪入れず学生が聞いてきました。
「アメリカドル、一ドル日本円でいくら」
私もこれくらいならすぐ答えがでます。
「一ドル三百六十円」
彼ら計算を始めました。そして2人声をそろえて言いました。
「日本からタイに来るのにそんなにお金がかかるの?」
私だってこの金稼ぐのに、大阪万博で徹夜に続く徹夜したのです、決して楽して 稼いだ金ではありません。胸張って答えました。
「そう、高かったよ。」
「じゃあ、日本からいくらくらい金持ってでたの。」
十万円がテンミリオンなら、9万円はナインミリオンです。簡単なものです。
「ナインミリオン円」
「ワオー、じゃあそれどうやって旅行中運んでいるんだい。」
体格の良い方が言うと、片方が答えました。
「大きな袋に入れて、サンタクロースのように運んでるんだよ、こうやってさ」
袋を背中に担ぐまねをして彼は笑いました。 ちきしょう、茶化すんじゃねーや、とは思ったのですがしゃれで返すほどのボキャブラリーがありません。
|