vol.043 タイ・バンコク (09)
食堂に降りていくと、いっぱいでした。どこもテーブルは空いてはいません。イスはところどころ空いています。相席しかありません。さっきまで枕かじっていた精神状態では、見ず知らずの外人旅行者と同席して朝飯食べるだけの根性はありませ
ん。
日本人らしい旅行者を捜しました。しかも今は男の方が精神的な負担が少なくて済みます。
一人もいません、もう一度探しました、日本人らしい女の子がいました。長いストレートな黒髪に、タンクトップ、微乳、Gパン、白人の背高のっぽの男付。ロンドンパリの男がこちらに近づいてきます。指を一本立ててこう喋りかけました。
「オンリー、ワン」
こいつ昨日はちゃんと寝ただろうか、俺は眠れなかったのに。
私「ヤー、ワン」
彼も立ち止まって、空いているイスを探しています。 私は女の子に近づきました。
「すみません、日本の方ですか」
急に話しかけられてびっくりしたようで、私を見上げました。 かわいい。俺より、2,3才年上かな。
「ええ、そうですよ」
私「ここ座って良いですか、ほか空いてないんで」
「いいですよ」
私「どうも」
男と目が合いました。北欧系の人のようです。
私「ハーイ」
男「どうも」
私「えっ、日本語しゃべれるんですか」
とたんに私うれしくなりました、英語喋らなくともいい、少なくとも飯食っている間は!
男「少しね」
兄ちゃんが注文取りに来ました。もう部屋でるときから今日の朝飯は決まってました。
「エッグ、フライドライス」
昨日夜食べた、焼きめしがめちゃくちゃうまかったのです。
「アンド、コフィー」
兄ちゃん「ジャストナウ、オア、アフター」
解る解る、コーヒーは焼きめしの後か前かと聞いてるんだ。
私「アフター」
私が注文している間、彼女たちは自分たちの会話に戻ってしまいました。英語でなにやら話しています。私には全然わかりません。
私もやることなくなったので、横で話に合わせてうなずいたり微笑んだりしていました。
なかなか話の中に入っていくきっかけがつかめません。そのうち焼きめしが来 ました。やっと目先のやるべき事ができました。美味い、昨日と一緒で美味い。
「それ、安くて美味いよね」
女の子が話しかけてくれました。この焼きめし2本ほど生のネギが付いています。これも悪くありません。
「昨日初めて食べてこれおいしかったんで、今日も頼んだんです」
やっと日本語での会話ができそうです。
私「ここ長いんですか。」
女の子「ここって、このホテルってこと、そうね、ここは10日くらいかな」
今度は男の人が黙りました、日本語片言しか駄目なようです。
私「へー、日本出てからどのくらいなんですか。僕は、一ヶ月くらい前に船ででたんですけど」
女の子「1年半くらいかな、ヨーロッパからこっちに来たんだけど」
船で日本からでたことを強調して、西表島での去年のジャングル遭難時件を話そうと思っていたのですが、船という言葉になんの反応もしてくれません。
何かしゃれたこととか気の利いたことを喋らねばなりません。そうだ昨日のバンコック中央駅の係員、このホテル開いてるのに閉まってるといい加減なことを教えてくれた、これ喋るしかない、とっさにそう思いました。
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