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田森くんは西へ Index page へ

vol.037 タイ・バンコク (03)

 

道路の路面は強い西日でやけに焼けています。今日の朝までいた香港もかなり暑いと思っていたのですが、ここの暑さは段違いです。シャツは厚手の綿のシャ ツですから腕まくりしても暑くて仕方ありません。特に暑かったのが足下です。 インドのへび対策として黒のバックスキンのトレッキングシューズをはいてきたのですが、道ばたで待ってるときもその靴の黒さが熱を吸収して足がゆで上がりそうです。宿に到着して靴を脱ぐときの臭いはすごそうです。  

バスが走り出して風が入りだしました。バスは混んではいたのですがぎゅうぎゅう詰めになるほどではないため風はバスの中の熱を持っていってくれました。屋根に当たる西日の輻射熱だけはどうしようもありませんでしたが。  

たぶんこのバスはバンコック中心街に向かっているはずです。さっきくどいくらい空港の案内所で確認しましたから。しかし不安で仕方ありません。地図を引っぱり出して確認しますが今どこを走っているかさっぱり解りません。夕日をバスの右手にほぼ真横に受けてると言うことは、たぶん南に向かっているのではないかとは想像できます。  

バスの中をぐるっと見てみました、外国人らしいのは一人もいません。ただ乗客の中で一人だけヤンキースの野球帽をかぶった小太りのおじさんがこちらを見 ています。地図を持って近づきました。

「ハロー、ドウ、ユー、スピーク、イングリッシュ?」
おじさん「イエス、」  

私はこの頃まだ、英語をしゃべることに関してはビクビクもんでした。英語で意志の疎通をした経験があまりないため、学校で習う授業としての感覚しか残ってなく、実際の言葉としてのリアリティがなかったのです。

私「ダズ、ディス、バス、ゴー、ツー、バンコックステイション」
おじさん「ノー、ユー、ハブ、トゥー、チェンジバス、ウーン、レットゥ、ミー、スィー」

すぐには答えられないらしく、地図をしばらくひっくり返しながら見ていました。 バスに乗り合わせた周りの乗客も地図見ながら、おじさんと話し始めました。

「ここがこうだから、この道がこれで、乗り換えはここだよ。」
「いや違う、バンコック駅はこの方向だからこの手前のバス停で乗り換えて市内の循環バスへここで乗り換えた方がずっと早い。」
「ちょっと待って、この地図どういう風に見るんだ」  

タイ語がバスの中を飛び交っています。車掌も巻き込んで大討論会になってし まいました。  

結局最短乗り継ぎコースが決まったらしく、おじさん地図にマークつけて返してくれました。

「乗り換えするところは地図の上ではここだけど、車掌が教えてくれるから心配しないでいいよ」

車掌の方を見ると、にっこり笑ってうなずいてくれました。

おじさん「ウェアー、アー、ユー、フロム」

突然聞かれたもので一瞬考えてしまいました。 「ウェー、アー、アー、ユー、フロム」えーと、あなたは、どこから、存在したのか?と言うことは、どこから来たのか聞いてるわけか。

私「ほ、香港」
おじさん「アー、ユー、チャイニーズ?」