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田森くんは西へ Index page へ

vol.038 タイ・バンコク (04)

 

そうか、「アー、ユー、フロム?」というのは、何国人か聞いてきてるのか、私初めて知りました。私自身の不勉強もあるのでしょうが、大学3年生も終わりの頃こんな初歩的な言葉さえ、ツッカエ、ツッカエ考えなければ意味が分からないとは、やはり日本の英語教育間違っていると思いました。  

とんちんかんな答えをした恥ずかしさで少し赤くなってドモリながら答えまし た。

「ジャ、ジャ、パン」 (香港から来たでも完全な間違いではない、are you from が文字通り、ここに来る前の旅行地とか経由地の意味でも使われることがあるのを知るのはずーとあとのことです。)
おじさん「ソー、ユー、アー、ジャパニーズ」
私「イエース、イエス」

どぎまぎして精神状態が不安定なときは言葉が連続して出ます。

おじさん「ステューデント?」
私「イエース、イエス」
おじさん「トウキョー」
私「ノー、ノー、オーサカ、オーサカ」  

バスは何回かバス停に止まりながら乗客を拾っていきます。車掌はその都度、しんちゅう製の切符入れの筒に入った小銭をじゃらじゃらさせながら、器用に切符を切っていきます。 バスが止まるときには車体を手でばんばんたたきます。そうだまだ私は切符を買っていません。

私「ヘイ、ヘイ、チケット、チケット」  

車掌を呼び止めました。彼は英語がしゃべれないらしくて、野球帽をかぶった おじさんを指さしてにこっと笑いました。

おじさん「オー、ディスイズ、ユア、ティケット」
えっ、どうも私の分まで切符払ってくれてたようです。

私「サンキュー、サンキュー、ベリーマッチ」
最初からバンコックはついてます。

おじさん「バット、ユーペイ、ネクストバス」

しゃれの分かるオッサンです。このおじさん、ビルマ航空の貨物便の係りをしている人でした。話は弾んで、日本の調味料の醤油の話まで、出てきました。  
彼が言うにはキッコーマンはおいしい、素直にそうだと言っておけば良かった のですが、私は、あれは輸出用に作られていて非常に塩辛い、あまり日本の人は好まないなんて言ってしまいました。  
何かの本で、アメリカのお店に並んでいるキッコーマンは、輸送途中にかなりの日時がかかるので水分が蒸発して、日本で売られてるものよりかなり塩辛いと読んだことがありました。海外に輸出されたキッコーマン使ってみたこともない のに、あれはおいしくはないなんて言ってしまいました。ちょっとでもしゃれた ことを言ってみたかったのです。

おじさん「じゃあ、どこのものがおいしいんだい」  

私は、返事に詰まってしまいました。ヤマサが良いよ、なんて言っておけば話はそれで完結してたのですが、そのときはまじめに答えを考えてしまいました。 えー、えー、そうだ俺の田舎の小さな醤油メーカーの刺身醤油はちょっと甘酸っぱさもあって美味いや、となるとどうしゃべったらいいものか。

「カントリー、スモールファクトリー、メイク、グッドテイスト、しょうゆ」  

そうだ、醤油は英語でなんて言うのだっけ。無い知恵を絞っても、そんな単語 習った記憶ありません。

「ウー、アー、ウェール」
どう考えても単語が出てきません。

「グッド“キッコーマン”、オンリー、カントリー、スモール、ファミリーカンパニー、セル」

おじさん「ワット」たぶんホワット、と言ったのでしょうでも私には、ワットと 聞こえました。

「スモール、ファミリー、カンパニー、メイク、グッド、キッコーマン」
田舎の小さな同族会社が良い醤油を作っていると言いたかったのです。

おじさん「ホームメイド、キッコーマン?」
そうそう、ホームメイド。ちょっと意味違うけど、似たような感じです。 おじさん納得してくれたようです。

市内に近くなったようで、最初は平屋の家が多かったのにビルが多くなってき ました。おじさんは途中でバスを降りました。何かあったらいつでも電話しなと地図に自宅と会社の連絡先を書いてくれました。