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田森くんは西へ Index page へ

vol.015 旅立ち・神戸港 (2)

 

眠眠で昼飯食べたあと、寝袋とか旅行用小物を買って神戸の港に到着したのは4時半過ぎでした。さすが緻密な計画が得意な田島です。ちょうどいい時間につきました。もう何人かは、手続きのため並んでました。  

今まで旅行に行くとき、荷物の検査とか出国手続きなどやったことありませんから少し緊張しました。それと手続きの時、ほかの連中は沖縄への渡航許可証なのに、私達3人はパスポートでしたので少しですが優越感を感じていました。回りもそんな風に見てましたし、私ら沖縄経由で台湾へ行くのを強調しました。  

買った切符は二等の和室、大部屋だとは聞いていました。どんなところか期待していましたが、そのまんまの畳敷きの大部屋でした。一人当たり畳一条分くらいのスペースがあって場所は早い者勝ち、その場所が自分らのテリトリーだと主張するには、荷物をそのスペースの所に置いておくだけ、まことにシンプルな方法でした。  

3人分のスペースを確保すると、あとはデッキから見送りの人に紙テープを投げて別れを楽しまねばなりません。私の彼女、と言うか彼女ごっこの神戸の女の子は来ていませんでした。女に関しては私はそう派手な方ではありませんでしたのでまたかとは思いました。すっぽかされることはよくありましたので、まあそうは悲しくはないというか、今回は悲しいというか、こなけりゃ来ないで暗い気分に酔うこともできましたのでそれはそれでいいわけでして。岸壁側と反対側のデッキを行ったり来たりしながら出航までの時間を待ちました。田島、中島は船室の中に寝っころがって漫画読んでます。  

いよいよ出航の銅鑼が鳴りました。船は少しずつ岸壁を離れていきます。私の手には投げるあてのない紙テープが握られていました。相手がいないわけですから船が岸壁に停泊してるときには投げにくいです。少しでも岸壁から離れたらどさくさに紛れて投げても誰に投げたかわかりはしません、そのチャンスをねらっていました。

いよいよ、どうせ俺なんかモードに気分が切り替わりそうになるときでした。 船の最後尾の方の岸壁に彼女がいました。さっきまでいなかったのに今着いたような様子です。船を見上げてきょろきょろしています。  
急にモードが俺だってモードに切り替わりました。

「おーい。おーい。こっちこっち。今田さん、今田さん」  

大きく手を振りながら呼びました。気がつてくれないようです。船は少しずつ 岸壁を離れています。彼女ハンドバックからめがねを取り出しました。そう言えば彼女目が悪いのを忘れていました。2月ですから午後7時はもう真っ暗です。岸壁と船のデッキだけが白く神戸港に光っています。  

やっとこちらに気づいてくれたようです。遠慮がちに手を振ってくれました。テープを投げるのは今しかありません。しかし遅すぎました、投げたテープの先は彼女の手元に行く前に海に落ちてしまいました。岸壁から船は20m以上は離 れていました。  

そのときの彼女の姿は今でもしっかり頭に焼き付いています。編み上げの濃い茶色のロングブーツに白いセーター、スカートはミニで確かコートを羽織っていたように思います。かっこよかったです、さすが神戸の女の子です。一時間ほど早く来てくれればもっとよかったですけど!