vol.009 旅の計画 (3)
70年の11月中旬には趣味のものを買うのではなく、来年はインドかヨーロッパへ旅行に行くことにしました。
当時大学生でしたから、たまに学校の中で開催される旅行帰朝報告講演会(文字通り一字一句違わない名前ではありませんが、講演会の雰囲気はこんな感じでした。帰朝でっせ帰朝)へは出てみました。
それはヨーロッパの旅行体験の講演会でしたが、絶対インドへとは思ってはいませんでしたので、海外旅行はどんなものかな程度の興味で参加したのです。
講演者はヨーロッパ3ヶ月、無銭旅行をしてきた体験を話しました。ストックホルムでの喫茶店の皿洗いのアルバイトとかシベリア
鉄道の話、いったん講演会が終わって質問の時間がとられました。 私はやはり、ちょっとインドにこだわっていましたのでヨーロッパ
から中近東インドを回って帰るルートについて質問しました。
彼は、往復ともシベリア回りで中近東は通ってないので詳しいことは解らないが、そちらのルート時間がかかるけども何人かがイスタンブール経由で出発したとのこと。ロンドンだかパリ発でインドのデリーかネパールのカトマンズへ不定期だけども直行のバスの便もあるらしい、そしてバス会社かあるいはそのバスの名前が「マジ
ックバス」と言うらしい、ことを教えてくれました。
さらにもっと収穫があったのは、大阪に「海外旅行研究会」というサークルがあって海外個人旅行の人のための機関誌を出していることを知ったのです。その機関誌は講演会場の入り口で売られてました。早速購入です。
海外無銭旅行に一歩も二歩も近づきました。ただ、どう考えてもヨーロッパで何ヶ月も皿洗いとか土方仕事をする自身はありません。学生生活の不摂生がたたって体重は48kgから50kgくらいしかありません。身長は170cmちょっとあるのにです。今からは信じられませんがウエスト73くらいのズボンが十分はけた体型でした。
迷いました、ヨーロッパで皿洗いしながら無銭旅行するか、インド東南アジア旅行だけにするか。予算は30万円しかありません。
ヨーロッパ行くなら現地で働かなければ一ヶ月弱しか滞在は無理です。インド東南アジアなら、所持金だけで2ヶ月半は滞在可能です。
迷いました、まして来年は4年生です。社会への執行猶予期間は来年で終わりです。現地で働いて滞在費を稼いでいるような時間はありません。インド、東南アジアにすると、東南アジアはまだしも、インドの情報がありません。小田実の「何でも見てやろう」は旅行記としては面白いけど、実際の旅行の参考にはなりません。
「海外旅行研究会」の会合に出ました。そのころよく森ノ宮辺りの公民館か、市民会館で月一回開催されていました。やはり、インド中近東の情報はありません。
そうこうしてるうちに韓国とマレー半島を旅行した男が見つかりました。彼の名前は沢地くんと言います。彼は学校を卒業するとそのまま吹田市役所に就職して、毎年海外をぷらぷらするのを趣味に現在まで至っています。
東南アジア関係で旅行のことを誰も知らない中。彼の情報は大変ありがたいものでした。
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