vol.007 旅の計画 (1)
万博が終わった後2ヶ月くらいは皆虚脱状態でした。
私らの友人でも最後の一稼ぎとばかり6月くらいから一日12時間労働を続けるのが多かったのです。うまくいけば中古ならパブリカクラスが買えるくらいはお金が貯まりました。
私は最高16時間労働を一ヶ月続けました。途中仮眠が3時間くらい有りましたが、きついのなんのって、さすがに小便の色が赤茶けたものになり始めて、背中は痛くなるし、16時間労働はやめました。その後も10時間、12時間はやりましたが。
ここまでいくと虚脱状態はやはり最低は2ヶ月は来るようです。毎日、昼過ぎ起きて学校へは飯を食いに行くだけ、昼と夕飯を2回学食で食べると、下宿へ帰ってコーヒータイム、そのまま午前2時3時までだべって寝て、昼過ぎ起きて。
バイト行かなくとも30万くらいのお金が懐にあります。下宿は10人くらい学生ばかり入っているアパートだったのですが、皆がほとんど同じ境遇、毎日皆がトドになっていました。
12月になるとさすがに、車買う奴、飲みに行く奴、麻雀に励む奴、やっと動き始めます。下宿でいつもたまり場になっていた五味川くんの部屋も、コーヒー飲みながら半日ダベッテいるのは私と、田川くらいの3人になりました。
私もなにもしてないわけではなく、一応当時は8mmカメラにこってましたし、普通のカメラにもこってました、自分で現像までやってましたし、ステレオセットにもこってました。万博でバイト中は懐が暖かいわけですから、部屋の中は少しずつ、カメラ、8mm、スピーカーなどが増えつつありました。
30万円全部つぎ込むとしたら、ニコンが買える、レンズとか引き伸ばし機も含めて買うとしたら、トプコンでもいいし、ミランダならもっと安く買える、レンズの本数をもっとと言うことならペトリは安くそろうけどもレンズの抜けがよくない。
8mmならコダックかフジか。フジなら安くそろうけどもフィルムが日本独自の企画だし、色の再現がコダックの方がいいし、フイルムの種類もコダックが段違いに多いし。音入れるとなると携帯用のテレコも必要だし、同調機も買わねばならないし。
ステレオなら、JBLとかグッドマンのスピーカーに、カトリッジはサテンのMC型アームはニートかAT、アンプはマッキントッシュかマランツ、テープレコーダーはTEACかソニー、赤井でもいいかもしれないし、チューナーはもちろんトリオ。
30万まるまる使うとなると、どれか一つの趣味に絞ればなかなか のものがそろいます。一時は毎日カタログ集めに梅田とか日本橋をかけずり回りました。そして一日中カタログを見ながら予算をたてては消したてては消し、下宿の連中もあきれていました。もうそのときは、ステレオも、カメラも,8mmも学生としてはなかなかのものは、もう持っていました。
ステレオは、トリオのチューナー付きの総合アンプ、スピーカーは25CMのパイオニアボックスは自作、ターンテーブルはジュピターのダブルベルト式、アーム、カトリッジはAT、オープンリールデッキはハーマンカードン(これだけはあまり気に入ってませんでした、アメリカ製のデッキでつい出来心で買ってしまった奴でT
EACにすればよかったと今でも思ってます)
カメラは、オリンパスペンD−3、ペンF、ニコノス(ニコンの 水中カメラ) 3台、8mmは....。
これらを欲しいがため、学校にも行かず1年生の時からバイト人生でした。万博がそれの総決算でした。
ある日、カタログを整理していたら、高校時代読んだ本が出てきました。それは河出書房から出版されたペーパーバック「何でも見てやろう」でした。何とはなしに読み始めて、どうせ暇だからそのまま読み続け、読み終わったら朝の4時になってました。
そうか、30万あったら旅行にも行けるな。そして高校2年生の 夏休み、大学生になったらインドへ行こうと思った記憶がよみがえ
りました。
「インドもいいかもしれない」
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