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トラベルメイト片山くんが行く

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  1. 【 片山くんが行く(73) 】

     五時半過ぎから生徒が一人二人と集まってきます。最終的には10数人になりました。彼らが私たちを見る反応はコペンハーゲンでの反応と同じです。おっ、東洋人がいるこいつ空手使いのプロなのかな、どうも気になるぜ!そんな雰囲気です。

     先生、と言ってもさっきの白人男性ですが、授業の前に説明を始めました。私ら指さしながら話してましたから、多分日本から来た空手家が今日は来たとか説明したのでしょう。「おう」というようなどよめきがあがりました。悪い気はしません。私も、河本も、重々しく黙礼しました。

     練習が始まりました。ここもコペンハーゲンと一緒で型の練習はそこそこで、直ぐ組み手の練習です。

     練習が一段落したとき、練習生の一人が板を持ってきて試し割りを始めました。一枚割ったところで彼は私たちの方を見て板を指さしました。練習生はこれも先生と同じような体格の大男です。お前らなら空手やんなくたってたぶん板割れるぜ。

     挑戦されれば仕方有りません、それに食い扶持がかかっています。ゆっくりと前に出ました。お前が一枚ならこちらは三枚トライです。彼は床にブロックを引いてその上に板を渡した上で上から割りました。板は静止しているわけです。私はちょっと違いました。強そうなのを3人選んで板を両手で持たせました。もちろんさっき板を割った練習生もその中に入っています。彼は前方に立たせました。後の二人は右と左です。こう言うときはゆっくりと無口で重々しく動くのが効果的です。

     位置を決め、3人に身振りで腰を落とし若干板をつきだし気味にしてくれるように指示しました。右の練習生ビビリ始めました。先生の方を見て代わってくれと頼んでいます。私としては、先生に持ってもらった方が素人さんに毛が生えたような練習生に持ってもらうより数倍やりやすいです。

     にっこり笑ってしょうがないなという風をよそおって、肩すくめながら先生に話しかけました。「キャン、ユー、チェンジ?」

     うんうん、いい感じになってきました。多分あのくらいの板は割れます。割れなかったら赤っ恥もんですが、後には引けません。先生は正面の板を持ちました。何回か位置取りをして、距離を測りました。正面は正拳、右は肘うち、左は足刀。

     呼吸を整えもう一度距離を測ります。こら左のオヤジ勝手に下がるな。左の親父を半歩前に出して再度呼吸を整えます。道場の中は緊張感が走ります。

    「イヤー」気合いとともに前に一歩踏み出しました。

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