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【 片山くんが行く(66) 】
実は私には隠し玉がありました。オランダのハーグに兄貴の友人がいました。多分手紙を出してくれてるはずですから、訪ねていけば最低でも数日は泊めてくれるはずです。コペンハーゲンを離れたら、ハーグにしか知り合いらしいのはいません。考えるまでもなくハーグに決定です。
今ならたぶん皆さん電話してアポイントを取って行くでしょう、この頃は電話自体持ってる人が少なく、パリでも申し込んで電話が付くまで3年なんて時代です、手紙での確認などしてた日にはそれだけで3週間はかかってしまいます。
相手は日本の会社の駐在員でしたから会社には電話はあったでしょうし、こちらもホテルの電話使えば前もって連絡できないこともありませんでしたが、それ以前の、発想として電話してアポを取っていく等という考えは頭に浮かびません。
ほとんど「突然」といえる出来事が非常に多いときでありました。突然フィンランドにいるはずの友人が午前2時頃訪ねてくる、日本の友人が連絡もなく朝6時にドアを叩いたり(場合によってはオカルト、怪奇映画のたぐいになりそうですが、足はちゃんと二本有るとしての話です。)
私たちもその「突然」になることにしました。
コペンハーゲン中央駅を出発したのは、ホテルをくびになってから一週間も経たない時でした。イブ、ニルス、日本人のアルバイトの数人見送りに来てくれました。さすがに日本でのようにホームで万歳は出来ません。まだ二次大戦の影響が少しは残っているヨーロッパですから。
お互い元気でな、じゃあなと肩を叩いての別れでした。特にイブ、ニルスにはお世話になりっぱなしです。
「じゃあ、イブ、ニルス、サンキューベリーマッチ」
「ゴウ、リュウ、グッバイ」
日本人バイト仲間にも挨拶せねばなりません。「皆さんありがとう、またどっかであいましょう。」
コペンハーゲン発ドイツ経由ハーグ行きの列車は夜の闇の中へ動き始めました。
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