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【 片山くんが行く(27) 】
毎朝起きて行くところがあるのは面倒ではありますが、良いことでもあります。行った先で座ってなんにもしなくて良いのであればもっと良いのではありますが残念ながら働かなくてはなりません。働きながら暇つぶしをしていれば、お金がもらえます。かってのように「アーバイト」「ソーリー」の時のように時間だけ過ぎてお金が入らない境遇ではありません。一歩ではありますがヨーロッパで食っていける足がかりが出来ました。
厨房で働いている連中の国籍は、トルコ、アフリカ、スペイン、イタリアなどで、東洋人は私たち2人、ケンさんはシフトが違うので この後もほとんど顔を合わせませんでした。 仕事は河本が、鍋洗いと皿洗い、私は二日目からトイレ掃除、河本の野郎だいたいが見栄えが良い上に背も高い、英語も私よりしゃべれるだからだいたいが得な役は彼の方に回っていきます。
河本は、「99」のヤベッチをもっとガッチリさせて歯並びを良くした雰囲気。私は、「極楽とんぼ」の加藤に似てると思っていただければよいと思います。 皿洗い鍋洗いの担当の服装は、白い前掛けに木靴(ちょうどオランダのぽっくりみたいなもの)、トイレ掃除は前掛けも何にもなしの自前の服に靴。
仕事を始めてびっくりしたことは、皆がよくしゃべるしゃべる、日本では厨房で無駄話が飛び交うことなどあまりないよう思いますが、ここでは無口で仕事などしようものならどうしたおまえどっか悪いのか、コーヒー飲め、じゅーす飲め、うるさくてしょうがないので曖昧に笑うしかないわけで、笑って視線が合うと、お話が始まってしまいます。
言葉がわからなくとも、関係ありません。相手は言いたいことを言うだけだし、こちらの気の利いた返事など期待もしていません。自然と手より先に口がでてしまいます。これは良いです。 口より手を先に動かせなんて言われた日には、のどに飲み物が詰まって体が動けなくなってしまった状態と同じで気分が良くないです。口が先だと、体の動きにリズムがでてきます。
河本など、コックが乗ってくると料理に使った鍋をタイミング良く投げてくるのを受け取って、さっと水洗い、たわしを数回がっがっとかけもう一度ざっと水洗い、乾燥させるためのフックに掛け、鍋のそこをパンパンと手で叩いてさあ次って言う感じです。
私は、トイレで同じく下働きのトルコのオヤジと、モップもってストンプのようにリズミカルに、いけるわけありません。 元々、北欧のホテルのトイレはきれいです。別に掃除しなくともと言うぐらいきれいなわけです。数時間たつとトイレを使った人の靴についた泥とか埃がちょっとたまる程度なのです。モップでごしごし洗う必要もないわけです。
トルコのおっさんとバケツに水をくんでざっと流し、目立つところをブラシ掛けて仕事終わり。トイレ掃除は2週間くらい続けましたがゲロが撒き散らかされたり、便器のねらい間違い等ほとんどありませんでした。担当は午前中でしたし。夜の担当ならもっと壮絶だったかもしれません。
トイレ掃除だけでは8時間持ちません。厨房周りの廊下とか、従業員用の休憩室も担当しましたが、皿洗いとか鍋洗いに比べれば遊びみたいなものでした。見栄えは悪いですけどもね。
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