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【 片山くんが行く(24) 】
レストランの裏口のゴミ捨て場に、黒人青年はまだいます。ガラガラ大きな音を立てながら、ブリキのゴミ箱を整理しています。
河本「グッドモーニング」
私たちに気づかなかったのか後ろを向いたまま彼はゴミ箱を引きずっています。ドアを開けたときその音でかれはやっと気が付いたようです。
青年「ハーイ」
河本「ハーイ」
私もあわてて片手を揚げて挨拶しました。
裏口から厨房を見渡しました。さっきの東洋人は、食器棚の陰に隠れてよく見えません。背中とお尻だけが入り口からせわしなく動くのが見えます。まだ鍋を洗っているようです。厨房全体を見渡してみました。白人のコックらしいのが二人ほど、それ以外の下働きらしいのが数人、東洋人らしいのはいないか背伸びして見渡しました。どうも鍋を洗っている人以外にいないようです。
彼一人なら、当たり、もし彼以外にもう一人か二人厨房に日本人がいたとしたらたぶん私たちの出番はありません。
私「ANO、SUMIMASEN、CHOTO,SUMIMASEN」
日本語が私は変です。日本人らしいのがいる、だけど外人もいる、英語が私得意ではない、英語で話しかけたいけど単語が出てこない、早く日本人が何人いるか知りたい、とっさに英語風発音の日本語が出てきます。
コックの一人が私達に気づいて、東洋人に話しかけました。「HEY,KEN,ARE THEY JAPANESE?」
彼は鍋を洗う手を休めてやっと顔をこちらに向けました。昨日の彼だ。
「ああ、どうも、ボスから、二人日本人採用だと聞いてました、こっちに来て」
やった、これでやっと安心です。
「荷物は共同のロッカーがあるからそこへ放り込んで、貴重品は抜いといて。」
荷物を置くと、彼は厨房を案内してくれました。
「まあたぶん最初は皿洗いか、トイレ掃除か、ゴミ捨てだな、」「今は人数6人しかいないけど、後10分くらいで7,8人来るから、だいたい朝はここは15人くらいかな」「それと、厨房だけじゃなくて、メイドも隣の部屋に出入りしてるから、6時からは20人から30人がごちゃごちゃしてるわ、おばちゃんも多いけど、フィンランドから来てる子の若いのは可愛いのがいるから、ええよ。」
なにがええのか解りませんでしたが、何か良さそうなので二人とも頷くばかりでした。
「あんたら朝のシフトだけど、今日みたいに6時ちょっと前に来といた方がいいと思うよ、新人だからね、ここじゃあまり時間より早く来てもまじめだなんて思われないけど、日本人は割合時間に正確だと思われてるからそのイメージ通りにしといた方が最初はやりやすいと思う。」
ケンさんすごく親切でした。年は私達より5,6才上だったでしょうか。名字は、松田だったか松川だったか今はよく覚えていません。
河本「えーっと、名前はなんとおっしゃるんですか。」
ケン「ケンでいいよ、皆そう呼んでるしね。」
河本「ケンさんも6時からの組なんですか。」
ケン「いや、俺、朝弱いから、午後の部だよ、今日はたまたま、人でないんでかり出されたの。」
よりによって私らの初日に、あんたが鍋洗ってなきゃ私らあんなにどきどきして、日本人の数を数えなくてもよかったのに、とは思いましたが、そんなこと当然いえません。
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