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【 片山くんが行く(22) 】
昨日話があった、オスターポートホテルに急ぎました。10時ちょっと前にホテルへは着きました。裏口から顔を覗かせると昨日いた日本人が今日も働いています。
河本「あのう、ちょっとすみません、昨日来たものですが。」
日本人A「おう、来たかね。ちょっとボス呼んでくるから待っててな。」
彼は、事務所の方へボスを呼びに言ってくれました。期待がもてそうです。もし今日の朝彼がボスに話したときアルバイトが駄目なら、ボスを呼びには行かないはずですから。いや、でも今日の朝まだ僕らが来ることをボスに話してなかった可能性もあります。本当に今度こそ使ってもらえなかったら、今日の朝見た夢は正夢になります。このまま野宿を続けたとしたら二週間か三週間は持ちますが、日本への電話代を残すことを考えに入れると10日弱と言うところになりますでしょう。気分が高揚してるところへ水をかけられたとしたら立ち直るのにまた大変なエネルギーがいります。
日本人が帰ってきました。
私「どうでしたでしょう。欠員有りますか」
日本人A「休んでんのがいることは確かだけど、決めるのは俺じゃないからな、ま、もうちょっと待ってよ、ボス来るから。」
それから5,6分経ちました。厨房は朝食が終わった後らしく従業員同士暇そうに話をしています。事務所へ続くドアから大柄の黒縁めがねの男がでてきました。ちょっと見にはそうですね、大逆転の「ダン、エイクロイド」を痩せさせた感じでした。むろん典型的な北欧人、背はすごく高いです。
「日本人だよね、ここのレストラン何人か日本人いるよ」
こう、MRダンが言ったかどうかは解りません。私英語は不得手でしたから。このときは河本が全部話をしました。私は彼の後ろで、相づち打ったり、笑ったりしていました。よくは話の内容は解らないですが、何となく流れに乗る感じでした。だからたぶん彼はこんな話の調子で会話を始めたのではないかと思います。
「ヤー」とか「イエス」とか「ノー」の応酬が何分か続きました。双方の顔色を交互に見比べながら、私はあほのように愛想笑いを続けていました。それしか出来ることはなかったのです。河本の顔が少しずつ明るくなってきます。これはたぶん良い知らせです。
河本「今働いている日本人、人数は足りてるんだって」
なに、なら何故そんなに明るい顔で二人とも話せるの?
河本「ちょうど、二人田舎に遊びに行ってるって昨日言ってたじゃん」
私「おう、聞いた聞いた」
河本「その後がまでよければ、明日からにでも仕事有るってさ」
やりました、これで当分は生き延びれます。
河本「でもな、後10日から2週間くらいで彼ら帰って来るんだって、それまでで良いかって聞かれてるけど、いいよな。」
良いも悪いも、お互い10ドル札が一枚か二枚しか有りません。このチャンスを逃しは、もうモスクワ経由の強制送還便しか有りません。悪夢が正夢になってしまいます。
私「良い、良い、なんだって良い、金が稼げりゃなんだっていい」
河本「そうだよな、俺もそう思ってる、もっと長期のものはなんて言ってる場合じゃないもんな」
彼は、MRダン氏に向かって話し始めました。
「やー」.....「イエス」.....「サンキュウ、サンキュウ。ベリーマッチ」
MR.ダン「トゥモロウ、シックス、オクロック」
河本「サンキュウ、ウイー、カムバック、ヒアー、シックスオクロック」
河本、ダン氏と握手を始めました。私もあわてて手を伸ばします。
やっとこれで、一息つけました。ホテルに来るときには肩に喰い込んだリュックの重さも急に軽くなりました。ビールで祝杯を挙げて、屋根のあるベッドで眠りたいところですが、まだ安心は出来ません。明日ホテルへ行って予定が変わって仕事がないことだってあり得ます。「すまん、休暇とってた日本人昨日帰ってきたんで君たちいいよ」と言われることだってあります。 安心できるのは給料を実際もらって、お金が手元にはいってからです。そのときは$ではなくクローネでしょうが、なにかまいはしません。日本の円よりもっと強い通貨です。
私「それはそうと、バイト料いくらって言ってた」
河本「えーっと、税金で三割から四割引かれるって言ってたから、あれ、いくらだったっけ、確か一日3000円くらいくれるように思ったんだけど、税金引かれた後の手取りだったっけ、税金そこから引かれるんだったっけ」
いい加減なもんです。仕事があったうれしさで詳しい条件をちゃんと聞いてはいませんでした。でも、後一ヶ月は食いつなげることが確定したんですから。
私「六時というのは、夕方から夜勤かな」
河本「違う違う、朝の六時から昼の二時までの早番よ」
昼の二時に仕事が終われば、寝るまでの時間町の中をぷらぷら歩けます。コペンになれるには願ったりかなったりです。
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