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【 リロとハズキのチャリトリップ(8) 】
パナジに三泊して、自転車の試運転を済ませると、私たちはビーチ沿いにある安宿へ移るため、初めて自転車に荷物をつけてペダルを踏みだした。大した荷物ではないのに、ハンドルはガクガク振れ、自転車はよろよろとしか進まない。
ここ数カ月、運動から遠ざかっていたので、体はすっかりなまってフニャフニャしている。私たちはカラングートまでの短い距離を、ハアハアゼイゼイいいながら走った。
ツーリストに人気のあるビーチは、パナジの町をはさんで南北にひろがっている。国内の観光客で賑わうカラングートは、町の北西一五キロともっとも近い。そこから北に続くヴァガビーチやフリーマッケットの開かれるアンジュナビーチは特に外国人ツーリストが多く、浜沿いに歩いて行ける距離にある。
国道を左にそれて、村に通ずる道にはいると、両側はヤシの木が繁り、木陰からそよぐ冷たい風が頬に気持ちいい。ヤシの林のなかに時折見える家からは、昼食をつくるかまどの煙がゆらゆらと立ち昇っている。薪の燃えるにおい、にわとりの鳴き声、青い空、鳥のさえずり。ここでは時間がゆっくりと流れているのが肌で感じられる。
木漏れ日がキラキラ輝やくなか、自転車を音もなく走らせていると、私はなんとも言葉では言い表せないうれしい気持ちにつつまれた。
やがて道はカラングートの賑やかな通りへと続き、砂浜にぶつかったところで行き止まりとなった。昼下がりの太陽に照らされて白く眩しい砂浜には、初めて間近にみるインド洋の波がうちよせている。
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