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トラベルメイトリロとハズキの自転車旅行

  1. 【 リロとハズキのチャリトリップ(5) 】

     
     目的地のゴアは、ボンベイから直線にして約四〇〇キロ。飛行機は小一時間ほどで空港のあるパナジ市に到着した。空気が乾燥しているせいか、外は思ったほど暑くなく、しのぎやすい。真っ青な空に浮かぶ白い雲は秋の気配さえ漂わせている。

     空港のカウンターでプリペイドタクシーのチケットを買い、タクシーの列に向かった。私はてっきり、ここでタクシーの強引な客引きにもみくちゃにされ、高い料金をふっかけられて、ひともめするだろうと思っていた。荷物は勝手に積み込まれないように、しっかり手でもっておく。市内までの正しい料金は、空港の職員に前もって聞いておき、運転手と料金がおりあわなかったら、その場で自転車を組み立てる。これが出発前に私が描いておいたシナリオだった。

     ところが、東京を出て以来、何もかもがスムーズにうまくいく。すこし拍子抜けしたが、これで南インドの第一印象は、とても良くなった。客待ちのタクシーの中には、日本車の軽の一ボックスもあり、荷物の多い私たちにはちょうど良かった。しかし、順番が廻ってきた最前列のタクシーを無視して、後ろの車に乗るのはむつかしそうだ。ここでは一〇〇〇ccクラスの車に大人七人は乗るのがふつうだ。

     私たちの荷物が多いと言っても彼らからみれば、物の数ではない。しかたなく、順番の通り、少年の運転する年季の入ったアンバサダーに乗り込んだ。少年は輪行袋の一つをトランクに入れ、もう一つは屋根のキャリアにくくりつけると、スピードをあげて空港をあとにした。車は小高い丘をかけぬけ、カーブするたびに、キラキラ輝くアラビア海が目にとびこんでくる。おだやかな青い海原に白い波が光ってまぶしい。

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