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【 リロとハズキのチャリトリップ(2) 】
私達が最初にたてた旅の計画では、ヨーロッパやアメリカから走り始めるつもりだった。しかし、先進国の充実した情報と整備された道路の上をなぞる前に、アジア各国のあまり知られていない所を走ってみたかった。
旅の資金の面でも、余裕のあるうちに出費の少ない所からさきにまわるほうが、気が楽だ。今、アジアは各国で市場の開放が進み、急速に変貌している。自転車からの景色が、日本車と大企業の看板で埋まってしまう前に、その国の風景をできるだけ多く網膜にやきつけておきたい。
そんななかで、南インドは私達にとってちょうどよいウォーミングアップといえる。英語が使え、どのまちにも食堂や宿があるので、旅行には不自由しない。インド政府は、海外からの輸入を制限する経済政策を長く続けたので、インドの風景には、良くも悪くもこの国にしかない強い個性であふれている。
一〇年前に私たちが旅行した時の北インドのイメージは、お世辞にも自転車旅行をすすめられるようなところではなかった。しかし言葉や文化が北と異なる南インドには、私たちをなおも引きつけてやまない魅力がある。
食事を配るスチュワーデスに起こされ、私はシートをたてた。「ダッカで乗換える飛行機は待っていてくれるのかなぁ」
飛行機は六時間遅れているので、私はダッカで乗り継ぎ便が待っていてくれるかどうか気がかりだ。もし、先にでてしまったら、私たちは荷物を預けたまま指定されたダッカのホテルに一泊することになるだろう。一〇年前にこの空港で乗り換えたとき、係員が乗客のパスポートを集めようとして、混乱している様子をみた。荷物だけでなく、パスポートまで身から離れてしまうのは不安なものがある。
「だいじょうぶだよ、飛行機は必ず待ってるよ」旅行会社のエージェントに勤めていた葉月は、この辺の事情にくわしい。今回のチケットも彼女が自分で手配したものだ。運ばれた食事をたいらげると、私は再び眠りにおちた。
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