パリの仏教徒(1)
車はパリ郊外からパリ市内へ入りました。どの道をどう通ったか定かではありませんとにかく最後は小さな道をあちらこちら回って、ソフィーの彼氏のアパートの前に到着しました。
スラムとは言えないまでも清潔さが漂ってくる地域ではありません。今までいたデンマークとか、オランダに比べ汚さが数世代にわたってこびりついた壁が続いていました。
「モノホンか」何とはなしに呟いていました。なんだか糞尿のにおいがするような気がしました。
狭いぎしぎし音のする階段を上がって3階が彼氏の部屋でした。ソフィーがノックすると、長髪にヒゲ面の男が顔を出しました。彼女の後ろにいる私たちを見て目を見開いて動作が一瞬止まりました。
「XXXXXXXXX」
彼女が早口のフランス語で説明し始めました。唯一私に分かった言葉はジャポン。
彼の視線は私たちとソフィーの間を行ったり来たりしています。笑顔が浮かびました。
「ハイ、フロムジャポン?ナンミョーホーレンゲキョ。」
最初なんと言われたのか分かりませんでした。ジャポンしか聞き取れなかったのです。
「ヤー、ヤー、ジャポン」
あわてて答えました。
彼の部屋に入ってから、ジャポンの後の言葉が日本語だったのが解りました。仏壇があったのです、仏壇が。前もって仏教徒とは聞いていましたが実際に仏壇が目の前にあるとびっくりしてしまいます。
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