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「トラベルメイト98」
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【 旅行業で喰うひとびと(8) 】
旅行会社社員のエピソードはまだまだ続きますが、トホホな人ばかり取り上げていると、旅行を申し込む気にもなりませんでしょうからユニークな人も取り上げてみましょう。
繁華街の大手の旅行のカウンターなどには、まずこの手の人はいません。中堅のユニークな旅行を売りにしているところとか、航空券のみを専門に販売しているところに何年間かはいたりします。ほとんど、こういうユニークな人たちは少しでもお金がたまるとふらふらっと、行きたいところへ行ってしまいますから、運がよくないとなかなか会えません。
こういう良いエピソードを持ってる人は、当然私の下で働いてた人です。へっへっへ!
<パット、だから言ったじゃない>
すごい夫婦でした。旦那は今は大工さん、しかもヨットも扱える船大工さんでした。奥さんは東京下町の出で、お互い知り合ったのはポルトガルだかザンビアだかの町中でした。知り合った当時は、旦那は全然お金がなく、明日食べる食事のお金もないような状態だったそうです。旦那はパットさん、奥さんはマドカ、あとで生まれる娘さんはウミちゃん(ウミは海のウミです)でありました。決まり文句は「パアット・アイ・トールド・ユー」。
パットさんはのんびりしている性格、奥さんはしゃきしゃきの下町っ子、でありますからして肝心なときにパットさんよく遅れてきたり、アポイントを忘れたりします。
よく事務所のマドカさんあてに電話がかかってきます。
「パットさん、まだ来ないんだけど」
マドカ「え、まだ行ってませんか。今日は三時に行くと言ってましたが、ちょっ
と心当たりを探してみますんで」
数カ所電話してみても連絡が取れません。一時間ほどしてからパットさんより電話があったりしますと、
パット「マドカいますか」
田中「ああ、いま代わります。マドカさん、パットさんから電話」
あいつ、今頃電話してきたのと、ぶつぶつ言いながら電話を取ると開口一番、
「パアット、アイ、トールド、ユー」
あとには、遅れるなら遅れるで電話くれればいいのにとか、アポイントをちゃんとメモにしておいてくれと言ったよねとか続きますが、最初の一声は決まって
「パアット……」
カウンターにお客さんがいようが、今まで雑談していようが、すごい迫力の声です。けんかすればするほど仲がいいとは言いますが、週に二回はありました。彼らのなれ染めは、ポルトガルで、こんなんだったそうです。
********続く
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