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「トラベルメイト98」
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【 旅行者(10) 】
寸間千(すんません)、とうとう旅行者の項もNO.10まで来てしまいました。(5)くらいでやめるつもりではあったのですが。(11)くらいでやめて、次は旅行会社社員の話題をやります。業界を知ってる人はそうそうとうなずいてくれるでしょうし、そうでない人は、ええっそうなのへーと納得すると思います。
ダイヤモンド社のブランド名で、中国自由旅行をOEM始めたのは83年春からでした説明会場もダイヤモンド社の会議室になりました。当初30人弱くらいの人数を予定していたのですが、とんでもない50人強の人数が集まったのです。補助イス出しても間に合わず最後の頃来た人は立ち見です。講演会とか説明会を開いたことのある人は分かると思いますが、その会場の収容能力の六割以上参加者がいるとまあ励みになります。五割以下だと寂しくなります。立ち見がでたらこれは気分は「HIGH」です。
質問も「何であなた方のような」という部分はほとんどなく、最初の疑問点は難なくクリアーです。中国に自由旅行できる事自体への疑問は「金剛石偉大社」というフィルターを通すとゼロになりました。むしろ、旅行にでたあと現地ではどうすればという具体的な不安が多かったようです。みんなげんきんです。(ふん、どうせ俺らはブロ−カーだよブローカー、少し私ら頭に来てました。販売元と会場が変わっただけでこんなもんかよ)
元々私ら生まれたときから少しひねくれてました。周りの連中も、しゃべるとき少し口をゆがめ気味にしゃべる連中が多かったのです。類は類を呼ぶとも言いますが。会場は立ち見だし私らが集める人達より氏素性がちょっと良いかなと思える人達だし。服装も、本当に不潔なやつはいないし、Gぱんもすり切れていてもほんまもんのはきすぎですり切れたんではなく最初からそうゆうふうにして売ってあるものか、自分で破いてワッペン張ったりしたファッション製の高いヤツデ。ツボの中に住み着いているマニアの食いつきそうな顔ばかり相手にしてきた私たちには、ほっとする雰囲気でした。
30人入る会場に数人なら、姿勢を低くしてもみ手したでしょう。でも今日は参加者50数人です。半分申し込んだとしても、30人弱、説明会も後2回あります。突然気分は大きくなりました。いい人たちばかりみたいだし。イッケー!
壇上で斜めに構えてそれいけドンドンです。参加者の中に中国自由旅行した人がいる確率はほとんどありません。もう一人の講師も(学生で2ヶ月くらい自由旅行してきた男でした)私も実際旅行しましたしね。南インドのお役人さんは怒りましたが。
多分そのときの顔は、ペンギンがビデオをとられて踊り出すCMがありますよね、ビクターでしたっけ。
「IT'S A BOOK]とペンギンが言った後、女の人がニヤッと笑いながら本の中からビデオをを出します。あのときの口を曲げてニヤッと笑うのを2倍くらいに引き延ばした感じでしたでしょう。やな旅行会社のおっさんですよ。自分でも思います。
その後何年かニヤッと笑うのをのを続けていましたが、悲しいことにだんだん通用しなくなってきました。中国も一般化し始めてましたから。しかしどこにも上の上はいるもので、説明会も回数を重ねるとそれなりの中国の専門知識が必要になってきます。現地留学していたK氏を呼ぶことになりました。ちょうど彼は81年前後に中国にいましたから、旅行自由化を内部から見ていた貴重な体験があります。
説明会2時間一人でしゃべるのはしんどい話です。後半の中国の旅行事情は彼にやってもらうことにして、前半は、ツアーとか自由旅行の商品の話し、渡航手続き、ビザ関係を私が終わりました。
後半なかなか順調に進みました。そして最後の質疑応答になりました。ある参加予定者の母親から質問がでました。
「最近上海は、ホテルが非常にとりにくくなってると聞きますが、とれないときはどうしたらいいのでしょう」
どう考えても答えようのない質問です。ホテルとれなきゃとるしかないので、どうもできません。とれなければ野宿か大きな駅の待合室にいるしかないので、まあ、私ならこう答えたでしょう。
「実際最近上海はホテル事情悪いので、なるべく早朝に到着する便を選んでください、夜中の便は到着してから苦労します。朝つけば明るい中でホテル探しが出来ますし。チェックアウトした人の後に直ぐ行けばとれる確率が上がります」
一見まともな答えですが、本当は答えになってません。それでもとれない時はどうするかということまで説明しなければ答えではありません。でもとれないときはとれませんから、がんばってと言うしかしょうがありません。でも、これはいえないですからね。
彼は、口を真一文字にして、腹から出る声で質問者を真正面から見てこういいました。
「ホテルとれないときは、今冬ですから外で野宿することもできませんし大変ですよ。上海は冬寒いですよ、駅のホームなんかで寝てたら凍死することもあります。」
げっ!そりゃそういう可能性もないわけではないですが、うむ、超高級ホテルなら部屋が空いてることもあるし、私、壇上で東京音頭を踊りたくなってしまいました。
会場を見渡すと、今までざわざわしてた空気が凍り付いています。あわててフォロウに壇上に駆け上がりました。
「まあ、今のは極端な話で、朝現地に到着したら何とかなることも多いし、一泊だけちょっと高いところへ部屋を取ってもらえればと思います。」
K氏「そんな甘いこと言っていてはいけません。北京などもっと寒いですよ」うわー!このままほっとくと、「ハルピンはもっと寒くて歩いてるうちに凍ってしまうかもしれません。」等とエスカレートしそうです。
後は、「えー」「あのー」「そのー」「まあ努力していただいて」「ちょっと早めに」等の言葉を続けて終わりました。会場は凍り付いてしまったままでした。こういうカウンターパンチ的説明会の方法もあるんかいなとちょっと考え込んでしまいました。
どおりゃー。なかなか進みません。
ついつい横道にそれてしまいます。次は本筋に戻ります。
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