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「トラベルメイト98」
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【 心の旅(9) 】
たぶんこの軽い「いっぱし口」状態から次の段階へいくのには、かなりの時間と体力と、気力と費用がかかるでしょう。その間に、「いっぱし口」は腐敗して新しいものに変わっていきます。腐敗が言葉悪ければ、発酵とでもいいましょうか。
うまく発酵が進む人は多くはありません。うまい日本酒が少ないように、発酵がうまくいくにはそれなりの職人の腕と、良い水と、良い米と、あと運とが必要です。
「いっぱし口」があなたの中でうまく発酵するにせよ、うまく発酵した人に出会うにせよ、何れにせよチャンスは非常に少ない可能性に賭けるしか有りません。まだまだ、発酵は国内のあなたのベースでスタートさせた方がより大きなチャンスがあります。目新しくはありませんけどもね。
海外は、あくまで観光に限定して「自分探しなど」やらないことをお勧めします。もうちょっとつっこんで意地悪く言えば、観光でしか旅行できないのに観光ではなく、「自分は放浪旅行をするんだ」か「してるんだと」思いこまないこと。
「いっぱし口」をさらに、オブラートで包んで皆さんに口当たりよく提供する生業の人たちがいます。旅行関連の作家ライターのお仕事してる人たちです。最終的には出版社が売れる売れないで出版を決めますので、彼らにだけ責任があるとは思いませんが。
「アジアンジャパニーズ」という本に出ている旅行者、ちょっと古くは、「ゴーゴーシリーズ」のエピソードの旅行者、もう少し古くは「12万で世界を歩く」の著者、はっきり言ってこの方々皆観光でっせ!あるいはお仕事としての旅行、飯の種の旅行です。
1970年代のはじめで、無目的の何かあるかもしれない、あるいは海外で一旗揚げるぜというのがまだ失敗しても社会にそれなりに認められたのは終わりました。珍しいことはやはり数は少ない出来事であります。日本からの海外旅行渡航者数を年度別にあげておきます。数字は正直です。どの年から海外旅行には希少価値ががくんと減ったかおわかりでしょう。逆に言えばどの年から、ミーチャン、ハーチャンも(言い回しがふるいです寸間銭)海外旅行に出やすくなったかおわかりだと思います。
日本人出国数 前年比増加率
1968---343,542.-----34万人−−28.4%
1969---492,880.-----49万人−−43.4%
1970---663,467.-----66万人−−34.6%
1971---961,135.-----96万人−−44.8%
1972---1,392,045.---139万人−44.8%
1973---2,288,966.---228万人−64.4%
1974---2,335,530.---233万人−02.0%
1968年以前は元々の海外渡航者数が少ないため、前年比増加率は20%から35%のところを保ってます。この時期は海外旅行がブームというより、今まで渡航が自由に出来なかった分の反動が数年にわたって来ていると見た方がいいでしょう。
本格的なブームは、71年、72年、73年です。
海外渡航者数が96万人−−139万人−−228万人と一気に大台に載せてきているからです。そして74年から、渡航者数は安定し始めます。73年から74年は、今までが嘘のように2%の増加率しか有りません。
73年から海外旅行は市民権を得たともいえるわけです。
確か沢木耕太郎は73年だか74年の出発ですから、海外旅行から探検と冒険の二文字がはずれたころで旅行に出かけています。ちょっと努力すれば一般の人も、割引航空券(そのころは格安航空券とは言いませんでした)を探せた時期になっています。しかも、ライターをしてたということはキャンセル航空券の情報も一般の人より早く入ったと思います。彼の出発2.3年前より数段良い条件がそろってたと思います。
(この人達へは、言いたいことたくさんあります。それはまた次の機会でお話しします。)
そういうわけで、簡単には「自分探しの旅」等出来やしません。が、もし赤の他人の中から「海外旅行で、自分探しに成功した人を選ぶ」としたら、くそもみそも、どんな人でも、人数をより多く、準備が不十分だろうか、心構えがまだ出来ていなくとも、一刻も早く海外に放り出す方法が、最も手っ取り早いとは思います。
大量の量をすぐ投入すれば、誰かが3ヶ月後にはサバイバルして、面白いキャラクターを選ぶことが出来るでしょう。
ただ、私が、選ぶ方ではなく、放り出される方であったなら、参加したくありません。あなたにも、参加してほしくありません。
人によっては、本当の世間知らずでいい人だと、「いっぱし口」聞ける場所に行き着く前に、機能停止することだって有ります。
精神の崩壊は、日本国内でのそれより海外ではもっと悲惨な結果になります。面識のない他人に、扱いが冷たくなるのは、全世界共通です。周りにいる知らない他人を悪い人も少しはいるかもしれないけど、基本的には同じ人間同士だからいい人であると思うのは勝手ですが、贅沢な考えです。
こんな贅沢な考えを持てるのは、精神的にも、肉体的にも、経済的にも何の問題もなく、そのたち振る舞いに後光が差しているような人だけです。
健康で、食欲もあり、お金もあって語学も達者な人の周りはいい人ばかりです。
その人の後ろの椅子に座って、咳ばかりして、やせて、不健康で、不快な体臭さえ漂う、明日の宿代さえ不十分な、影の薄いあなたの周りには、同じ場所で同じ時間であっても、いい人はほとんどいません。
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