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151. 【　心の病（８）　】
     
     　自分探しの旅をする前に、まず自分を作らねばなりません。それがものの順番です。何故、よく勝手知ってる自分の国で、自分を作るのでなく、ほとんどまわりに知り合いもいなく、時間的にも経済的にも不十分な状態の場所で自分を探すのでしょうか。しかも、日本で作るのを失敗した自分をさておいて、ピッタリ合う自分を探すのでしょうか。
     
     　自分がピッタリ合う自分を決めるとき、そのピッタリ感を判断するのはどの自分でしょうか？
     
     　コンピューターで言えば，ＢＩＯＳ（ベーシック、インプット、アウトプット、システム−−パソコンのマザーボードの基本的な制御を受け持つソフト、人間で言えば自律神経みたいのもの）が調子悪いのに無理してウィンドウズ９８入れて、その上からどんどん仕事用とか遊びのソフトをインストールするようなものです。
     
     　当然うまく動きません、さらに補修のためのソフトをインストールして直そうとする。事態はどんどん悪化していきます。ここで出来ることはただ一つ。まず、たくさん入れまくったソフトをまず全部取り払う、次に基本のＯＳである、ウィンドウ９８をも、取り払う、ＢＩＯＳのチェックから始める。
     
     　この間パソコンは何の働きもできません。人間であるあなたの場合も同じ事、外部に対し何の働きかけも、外部からの防御も何もできません。
     
     　そんな状態で、自分一人で、自分のベーシックな部分を作りますか。しかも外国で。こんな危ないこと海外旅行ではするべきではありません。
     
     　長期旅行者が溜まる安宿で、彼らの体験談を聞いて世界への目が開けた様なことを書いているライターがいましたが、そりゃー日本から出たての「自分探し症候群」の人にとって一見目指したものが見つかった気にはなるでしょう。
     
     　何せ彼らにはあなたより時間をかけた体験がありますから。そして世間ずれも、ずるさも、妥協も、せこさもその生活疲れの体に垢のようにどんどん溜まっています。
     
     　誰でも３ヶ月間、どこかの（できたら、インド、ネパール、中近東、南米辺り）旅行者の溜まりに何もせずボーとしてればいっぱしの口は利けるようになりますって！！
     
     初心者に対しては！
     
     　そんないっぱしの口は、残念ながら９０日の時限の細工がしてある口当たりのいいソフトです。最初に自分の頭にインストール（インプットといってもいいでしょう）からぴったり９１日後の午前０時０分、いっぱしの口は活動を停止します。
     
     　再びそのソフトが活動するには、目の前に初心者というソフトが現れなければなりません。現れなかった場合、隣の放浪２ヶ月目の兄ちゃんにこなかけますが、最初はうまく動きそうでも途中で止まってしまいます。
     
     　放浪４ヶ月目の気の弱そうな学生風のやつに矛先向けます。お互い３ヶ月で満タンになった「いっぱし愚痴（口）ソフト」は、動きません。「いっぱし口ソフト」が動くためには、溜まってるデーターを相手に注入しなくてはなりません。その注入の瞬間の快感は、あの射精に似たものです。
     
     　おう俺もいっぱしの放浪旅行者になれた！
     
     　私の３ヶ月にも及ぶ体験をやっと目輝かせて聞いてくれる人が来た。
     
     　でもねー、マスターベーションの後の虚脱感を必ず味わうことになります。ただ３ヶ月間で溜まってそれ以上は増加しない、他人と同じ体験だからです。驚くほど、三ヶ月目の個人旅行者はみんなが似ています。どこの国から来た旅行者も同じ雰囲気を醸し出しています。どうかすると、目の下の隈ので具合から、薄汚れて日焼けした顔、体臭まで似ています。

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