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「トラベルメイト98」
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【 心の病(5) 】
<偶然と幸運−1>
ほとんどの方は、海外旅行をするためには、それなりの時間とお金の余裕を作らねばなりません。短期旅行の場合はそうでもないのですが、長期にわたる場合はかなりの無理と犠牲を強いられます。これらが大きければ大きいほど期待も夢も大きくなっているはずです。
さすがに最近では、洋行帰りの体験を生かして......等の直接的な表現は恥ずかしくて使われませんが、
「目的もなにもない旅にでたかった....。今いる日本に疲れたのと、このま ま安泰な日常生活を続けていたら自分が無くなってしまうような気がして、 世界をこの目で見、手で触れ、自分の頭で考えようと思った。そして本物の 自分を捜しに旅に出た。」
と、まあこのような言い方をする人は多いと思います。
目的が抽象的であったり、漠然としたものであった場合、それを実現させるのに必要な時間とコストとリスクは膨大なものになるのはどんな世界でも同じです。
考えるだけの机上の空論なら、これほど口当たりのよい考えはありません。でも、いったん旅行に出かけたら、その瞬間から机上の空論は現実と向かい合うことになります。あの退屈だったけど居心地良い横町も、顔見知りの横町のおっさんも、気分がめいったときいつも座る椅子のある喫茶店も、なーんにも無くなります。
そして期待していたと逆の意味で新しい本物の自分と出会います。何もない所へ放り出された、何もできない自分!!!!
そりゃ新鮮です。ドラッグ飲まなくたって全身がエアサロンパスになれる訳ですから。そしてそのうち体全体がエアゾル状態になって空気中に拡散してしまいます。
こういう状態を何十回と繰り返して旅行を続けていくことが出来た人はかなり幸運な人です。幸運が重なって、あのアフリカの肝炎にも、インドのマラリアにも、南米の現任不明の熱病にもかかったけど一応は生き残って、泥棒にもスリにも、置き引きにもめげず、気分の落ち込みにも何とか耐えきって今があるわけです。
幸運がぽろっと手落ちてしまう人もいます。そういう人は精神的にも肉体的にも「今」が有りません。たくさんの旅行の体験記の背後には、「今」が無くなってしまって、修復不能になってしまった多くの無名の人がいます。
修復不能が周りの人にも納得行く形で有ったならまだ少しは救われますが、修復不能かどうか全くわからない人たちがいます。そんな人の人生の一こま見たければ、カトマンズとか、デリーとか、イスタンブールの旅行者がよく泊まる安宿の掲示板に張ってある顔写真付きの張り紙を見て下さい。
*名前−−リチャード、マクレガー(仮名)
*年齢−−行方不明当時21才
*行方不明の日時−−1993年6月5日付けのカトマンズからのポストカードの連絡が最後で以降連絡なし。カトマンズ以降、ポカラからヒマラヤトレッキングをする予定とのこと。本人はジョムソンコースを取った形 跡あり。
*身長−−178cm 体重−−65kg 痩せ形、髪はブロンド、目はブルー左足が子供の頃のけがで少し不自由、びっこを引いている、性格は温厚、バックパックのザックはグレゴリー製 黒(メイドインUSA)
*友人と両親による1995年1月の調査によれば、ゴラパニ近辺までの足取 り確認。それ以降情報なし。
***写真2枚***
左の写真、ハイスクール卒業の時らしいすました写真、21才より若い彼右の写真、アメリカ出発前の、グレゴリーのバックしょった写真
どんな小さな情報でも下記にいただければ
ジョン、マクレガー
xxxx S.FIGUEROA ST,LOS ANGELES CA9007
電話 213-748-xxxx FAX 213-748-5xxx
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