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トラベルメイトトラベルメイト95

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「トラベルメイト95」
  1. 【旅行中は我慢すべきか】

     長々と実用的な話から始まってエピソード、他のガイドブックの批判、二千万円の法則とおつき合いいただきましたがそろそろ話をまとめなければいけません。まずこの本の目的がなんであったかというと、遊びのための旅行をしようよ、そのためのはどんなことをしたら良いんだろう、実際の旅行はどんな物なんだとわかりやすく説明することでした。はたしてその目的を果たしたかどうか不安ではありますが、作り物ではない旅行の世界の一部でも、お見せできたように思います。

      遊びのための旅行は、心も体も楽をして楽しむ為にする物ですから、無理をして何かしたり、心を奮い立たせて旅行を続けたりする物ではありません。ましてや旅行することで自分が高まったり、本物の自分を捜せたり、真の国際人の第一歩を踏み出したり、よりよい国際社会の理解のためでもありません。

     長く仕事を続けていたり、勉強を集中していたりするとどうしても他のことをしたくなります。近くのコンビニで雑誌の立ち読みでもしたくなるかも知れません、散歩がてらちょっとうまいコーヒーを飲ませてくれる喫茶店へ行くのが良いかも知れません。海外旅行もこのちょっとした気分転換と同じ事なのです。最初の海外旅行は、他の人と少なくとも同じレベルに追いつくためだったり、数回目になるといかに自分は海外旅行になれて来たか語りたくはなりますが、年間千数百万人が旅行に出かける中ではもあなたが海外に出かける価値は単なる個人の体験でしかあり得ません。そう大げさに考えることでもありません。

     例えばあなたが海外旅行になれてきて、ニューヨークにはまりこんで「ニューヨーク通」になったとします。こう言うことでもどこにでもすごいマニアはいて、ここ三年間で数回ニューヨークに行っただけのあなたは太刀打ちできませんでしょう。かといって自分より下に人はいないかというと、ニューヨークに一回も行ったことのない人だってたくさんいます。元々興味のない人はもっと多いでしょうが!こんな中であなたが、旅行するごとに楽しくなってきているニューヨーク体験は何なのかと言いますと、その体験を皆が聞きたがるほどの目新しい物でも、そこいらの旅行会社のカウンターにおいてある物より数倍面白いツアーを自分で企画して直ぐ二十人くらい集めれる物でもありません。社会的な広がりはこれっぽっちもありません。

     それなのに旅行関連の本は、あなたに「あなたの行為は社会的な広がりのある物だから心して旅行せねばなりません。」「旅は人生に似ている、この団体思考の日本から抜け出て旅行するのはチャンスですから」「外から日本人を見るといかに日本人がXXX」とささやきかけます。個人的な価値しかない行為にですよ、何の物珍しくもない旅行にです。大げさに考え大上段に降りかぶってみても、竹刀を打ち下ろす対象がありません。

     すごく重そうだと思って力一杯持ち上げた荷物が本当は片手でひょいと持ち上げれる重さだったら結果はどうなります?そう、ぎっくり腰です。気楽に楽しいことを体験するために旅行に行きましょう。予算が少しでもあれば、旅行中はどんどん使いましょう。

     特に我慢してうまい食べ物を食べないことは最悪です。衣食住の三大要素の中の、食を冒涜する物です。安く安くが食事をするときのモットーになると体は疲れるは、気分は沈むは、良いことはありません。しかも、その国の食文化を最初から放棄する事になります。良く言われる「現地のまずい食べ物でも我慢して食べないと旅行に慣れない」と言う言葉は、おまえの国は貧しいからうまい食い物がないだろう、でも貧乏旅行の私はちゃんと問題意識を持っているから他の団体旅行者が食べないまずい食べ物でも我慢して食べてあげる、えらいだろう私はあんたの味方だよと言っているのと同じ事なのです。相手の現地の人にとってこれほど嫌みな考えはありません。これならまだ「おまえら現地人はこんなまずい物を食っているんか」と直接言われた方が、なんぼかましですし反論も簡単です。

     実際先進国と呼ばれるところを除いた場所での、汚くてまずい食事と言うよりも腐ってない食品の料金八十円と、それなりに現地で流行っていて好みの問題でうまいとも言える食事の料金百六十円とは倍半分の差はあっても、実際の差額は八十円であったりするわけですから、日本からの貧乏旅行者には簡単に払える金額なのです。

     衣と住についても旅行は我慢を競うところではありませんので、どんどんお金を使って、楽に楽にできる状態を作っていくことです。修行僧のような旅行をするのでしたら、旅行に出かけるべきではありません。日本で日頃ストレスのたまる生活を続けて、やっと取った休暇でまた強迫観念のように、自分探しの旅だとか、異文化との交流だとかの面倒くさいことを実行するわけでしょうか。やっとれんですよ。

     あなたはお金を使い、楽しさを求めて旅行をするわけです。消費するあなたは、お客さんと呼ばれて王様に近いもてなしをサービス業から受けますでしょう。そのサービス業のサービスは、基本的には使う金額が多ければ多いだけより快適なサービスが受けられて、あなたの無理も利くでしょう。逆に使う金額が少なければ少ないだけ、立て前だけの王様になっていきます。よほどの技術を持ったプロでもない限り、旅行するだけでストレスが日本で暮らしている以上にたまります。安宿は夏暑く、冬寒いし、虫はいるし、安い航空券ほど席は取りにくいし、病気や怪我もしやすいし、長距離の列車の二等車に乗ると朝早くから頭の上を鶏が飛び回って眠れないし、これらのトラブルを一通り体験するとアドレナリンハイの状態になってきます。一見リラックスしてリゾートでボーとしている状態にも似ていますが、これは似ても非なる物で、最終的に体か、心のどこかに反動が必ず現れます。

     消費するときは消費の論理でびしっと筋を通しましょう。今我慢すれば後でもっと楽しいことがあるとは思ってはいけません。今楽しむために旅行に出かけるわけですから、毎回毎回リラックスして快眠快食快便でなければなりません。そのためのお金はけちってはいけません。

     漫画ボノボノの中でラッコのボノボノがこう言います。

     「ねえ、しまりすさん。どうして楽しいことは直ぐ終わっちゃうんだろう、どうして長く続かないのだろう」

     そんな大変な「楽しいことを」最初から捨てて、何故旅行に我慢を求めるのでしょう。最初から楽しいことをやろうと思っていなければ、それでなくとも稀なチャンスしかない「楽しいこと」等できるはずがありません。

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