<<前のページ 次のページ>>
-
入門講座理論編ー(15)
少なくとも題名だけでも決まっていたなら、それにその当時の彼のポジション考えれば少しは自分が70年中期にやってきた旅行の事は発表してほしかったです。それなら彼の作品は個人旅行者の発展と一般化に寄与したと言えたのに。
産経新聞連載開始が84年じゃあなー(正確には6月18日)もうこの頃はデリー発イスタンブール経由ヨーロッパのコースなど面白くも何ともないコースになってました。ちょっと調べればどこからどこまでいくらとかすぐわかりましたし。
一台のバスでデリーからイスタンブール経由ロンドンとかパリ行きのコースを行くバスを「マジックバス」といったのですが、80年頭には確かお客がこのバスに乗らなくなって一旦つぶれたように記憶してます。情報が簡単に手にはいるので、馬鹿高いヨーロッパの会社の直行バスに旅行者が乗らなくなったのです。現地ローカルバスの乗り継ぎ方が断然安くあげれますから。
80年代に入ってから「オデッセイ」などを中心にした旅行マニアの者達の興味は70年代の熱病のような中近東経由ヨーロッパコースから、竹のカーテンの中「中国大陸」に向かっていました。70年代の竹のびっしり何重にも張り合わされたカーテンもさすがに外部からの風で風化が始まり、遠くから見てるとがっしりしたファイアーウオールに見えても、近くに寄ってみると入り込めそうな穴が所々にあいていました。(南米とかアフリカの方面の連中いましたが私そっち方面はほとんど興味なかったので調べて見いませんし知りません、こっち方面も面白いとは思いますが)
81年くらいからその穴に潜り込む人たちが増えてきました。その穴の一番大きな部分が香港でした。ここからだと割合簡単に潜り込めたのです。旅行者の中には中国に入ったが最後いける所まで行ってしまえとばかりがんがん奥地へ旅行に突き進んだ人たちが何人かいます。
80年代初期の中国は外国人には異常に親切な面と、異常に警戒心持ってる部分の二面性がありました。そして、外国人に対する対応はほとんどが北京で決まるのですが各地へ通達が徹底してなかったのです。
つまりあれよあれよという間に、香港の穴から外人虫がどんどん入り込んで中央政府が対応を決める前に中国全土に広がっていったのです。この虫さん達のネットワークと情報の伝達の早さ正確さは驚くべき物でした。さしずめ、広州駅前の流花賓館はその最初のサーバーでした。広州の公安外事科(日本で言えば外人登録所)の待合室はもっと正確な早い情報が手に入りました。
ラサも西の方の都市なら許可証がでるとか、一応書くだけ書いておけば案外だめそうなところがとれたりするぞとか。がせネタも多かったですが!日本人旅行者の中にも、ラサ経由でチョモランマ(エベレスト)山域へ入り込んだ人もいます。どういう訳か、西安あたりでラサ行きの許可が取れて、ゴルムドからバスとトラック乗り継いでラサへ、ここまで来たならついでだから山へ行ける所まで行ってやろう山登り始めたら、現地の軍隊に大歓迎され食料くれるは燃料もくれるし車で行けるところまで送ってくれるは、で「中日友好」てな感じですごく感激したそうです。
まあ当然頂上までは装備無いので上れませんから、適当なところでUターンして帰ってきたところ、行きは大歓迎してくれた軍隊が、帰りは一転して態度が変わり軟禁状態にされ昆明に飛行機で送り返されたそうです。行きは初めての外国人だというので歓迎されたのですが、彼が山の中に分け入ってるときに軍隊の誰かが北京政府に問い合わせ出したようなのです。当然回答はとんでもないすぐ拘束しろだったようで。このように中国政府もまだまだいい加減なものでした。
残念ながらこの旅行者O氏は、数年前癌でこの世を去りました。彼なりに無理続けたのでしょうね。シルクロード撮っている有名カメラマンのN氏も彼の才能は認めていたのですが無念であります。
81年から84年はアジアの流行は、中国でありラサからカトマンズの陸路の山越えであり、ウルムチからホータン経由パキスタン国境越えでした。
そんな中、10年くらい前の流行の地域の旅行記を発表する沢木氏の商売人としての眼力のすごさ。カトマンズ、ラサ、ウルムチ、ホータン経由パキスタン国境越えは売れないけど、香港、バンコック、カルカッタ、カトマンズ、デリー、イスタンブール、ロンドンなら「今」売れる。
彼だけの原因ではなく、メディアの保守性も加味されていたとは思います。この中近東コースと、貧乏旅行が一般メディアの中でも最も一般的な、バラエティの中で取り上げられるようになったのが、最近の電波少年の「猿岩石」でしょうから。
電波少年のTプロデューサーがこのアイデアの種本にしたのが「深夜特急」です。なんと沢木氏の実際の旅行から25年ほど、本が出版されてから10数年。何とかならんですか。この安全パイの商売は。
<<前のページ 次のページ>>
↑ページ最上部