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入門講座理論編ー(12)
後で個人旅行者のバイブルとも言える本になる「深夜特急」は、1984年か85年に産経新聞に連載されたのが最初です。単行本になったのは1986年5月新潮社より発行されました。
1984年か85年といえば、年間海外渡航者数が400万人から500万人の大台に乗りつつあるときです。1979年からは400万人前後でアップ&ダウンを繰り返していた人数がようやく上昇の兆し見せた頃です。
この間の数年、400万人前後で微増微減を繰り返していましたが、いくら延べ人数とはいえ全く同じ人が繰り返し出国してるわけではないので、年間数百万単位で海外旅行の経験者が増えているときです。この中で個人旅行者はどんなに少なく見積もったとしても年間数十万人単位でいたと思います。
ちょうどこの上昇機運にあわせて彼の「深夜特急」は新聞の連載が始まりそれが終わると間髪入れず、単行本化されます。もう一度海外渡航者数を載せておきます。
1986年−−551万人
1987年−−682万人
1988年−−842万人
バブルの発生とほぼ同じカーブです。
彼が出発した頃の海外渡航者数も参考までに
1971年−−96万人
1972年−−139万人
1973年−−228万人(たぶんこの年です彼が出発したのは)
おおーーー!と叫びたくなるくらい、上昇気流の見極めがすごい人です。文章とか見る目の鋭さは否定はしませんが、それにもまして世の中の動向の見切りがうまいこと!!!
それだけ才能あるのなら、1970年後半の停滞期にどこでも良いから作品発表してほしかったように思います。発表の場所彼なら、マイナーな所もマニアックな所の含め、中堅のところまでたぶん大丈夫ではなかったかと思います。
もし彼の旅行に関する文章が70年後半に発表されていたとしたら、70年後半のどうしようもないくらい違法に近い格安航空券の業界とか、無謀な無銭旅行で現地でまともな職業に就いている日本人に迷惑かけるばかりか、日本のイメージを大幅に損なう個人旅行者と見られていた鬼っ子の部分に、どれだけ明るい材料を提供できたか。
まあ、人それぞれ考え方があってそれぞれの性格才能、人生のタイミングがあるわけで、私があれこれ言うべきではないのでしょうが、1975年に終わった旅行の事を、1985年まで封印しておくというのは、10年も熟成して内容を推敲していたという考え方もできますが、どうも私には「よっ、商売人」と声をかけたくなる感じがします。
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