第74回 退院 (2002/04/22)
今日の午前中に退院することになった。手術後ちょうど2週間。感染症も起こらず順調な回復だった。昨年の暮れに入院してからはまる4ヶ月。病気の思わぬ展開に予想以上の長期にわたるものだった。
これまで他の多くの患者さんと寝起きをともにしてきたが、退院が決まるとみんなどこかうれしそうにはしゃいでいて、機嫌よく話しかけできたり、挨拶のチッシュを配ったり、早々に着替えて迎えを待ったりしていつもと雰囲気が違う。
その度に、自分が退院するときはどうなのだろう、と思ったりした。確かにうれしさもある。ほっとした気持ちもある。でもあまりはしゃいだ気分はない。むしろ充実した入院生活だったせいかさびしいような気もする。
退院するといっても、心臓病はともかく、糖尿病は食事療法を一生続けなければならない。病院でのように管理されたものだけ食べていれば簡単だがこれからはそうはいかない。
これからは自己管理という大きな課題が待っている。浮かれていることはできない。
でもやはり退院ということは大きな区切りだ。とりわけ自分の場合は年齢的な変わり目にもあり、さらに時代の劇的変化という大変な時期にも重なり、長い入院はじっくりと自分を見つめなおす良い機会だった。このことは病状の回復にも劣らず大きなことだった。今後取り組んでみたいことがあれこれ出てきた。
今回の貴重な体験の一つは、皆さんにメールを送り、読んでいただけることが大変励みになる、ということだった。これまでは一人でやっているのだというツッパった気持ちが強く、人に助けてもらうという感覚は少なかった。
でも素直に人の力の応援を得れば一人では無理なこともできるような気がする。限界の見えた自分であってもまだ何かできそうな気がする。また逆に、たとえ体が動かなくなっても楽しく生き、困難に直面した人のメールを読んであげるだけでも人の役にたつことができる。
生きる元気、命の力。インターネットにおいて、ビジネス利用とか情報の取得、eラーニング、通信販売などは表面的なことに過ぎないのかもしれない。これからのインターネットの本質は、生きる元気、命の力を伝え合うことにこそあるのではないか、そんな気がする。
「病の細道」は今回をもって終了します。長いあいだありがとうございました。
おわり
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