第59回 通知 (2002/03/30)
朝、食事をしているときに先生がやってきて「4日転院、8日手術」ということになった、と告げられた。長いこと待っていた通知がやっときた。
現在入院中の病院には心臓外科はなく、県立病院に転院して心臓バイパス手術をうける。当初は3月の始めにも転院して手術を受けることになっていたが、あいにく風邪をひき熱を出して延期になってしまった。なかなか熱が下がらずしばらく抗生剤の点滴をうけた。それ以降は特に異常はなく平穏に過ごしながら転院の通知がくるのを待っていた。
定例の手術は毎週月曜と火曜に行われるから、その1週間前の週始めに転院するのが普通らしい。毎週、週初めになるとそろそろ通知がくるのではないかと落ち着かなかった。しかし何の音沙汰もなく数週間が過ぎた。
この病院で行うべき治療はすべて終えていて、本来なら退院して他の入院待ちの患者さんにベッドを譲るべきなのだが、手術を控えて家にもどると食事や生活が乱れるのが心配で入院を続けさせてもらった。体調を崩さないように外出もひかえてきた。見通しのたたない状態のなかでいつまでわがままが許されるのかを考えはじめていた。
やっと通知が来た。何週間も待っていたことなのだが、いざその時が来てみるととても落ち着かない。気持ちを鎮めようと深呼吸を繰り返した。不安と期待。いつもならどうということもないこれからの10日間という時間が今回はとてつもなく長く感じられる。いつもは120ぐらいの血圧が今朝は150にもなった。
動揺し、気持ちを鎮められない弱さの中に自分が「生きている」ことを感じた。
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