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病の細道

 

第57回 体温 (2002/03/18)

 

入院中は毎日数回の体温測定がある。だいたい36度台が平熱といわれ、37度台以上になると「熱がある」とされる。

最初の頃、37.1度になったことがあったが、そのとき「氷枕で冷やしますか」と聞かれて戸惑ってしまった。

38度以上ならともかく、37度ぐらいだったら自覚症状だってあまりないのだから少し大げさなような気がした。だが少なくとも日本では、37度というのがひとつの境界線と考えられていることは間違いない。

ここで言っている温度は摂氏(C)だが、摂氏はもともと水の温度変化をもとにしている。水の凍る温度が0度で沸騰する温度が100度とされる。水は地球のどこにでもあり基準にしやすく、また地球は水の星だから自然現象を観察するのに適している。

しかし、温度には華氏(F)という基準もある。ドイツのファーレンハイトという人が、1724年に、塩化アンモニウムを寒剤として得られた当時の最低温度を0F、人間の体温を96Fとし、その間を96等分した温度目盛りを考案したといわれている。

華氏はもともと人間の体温をもとに考えられたことから、なかなか興味深い性質がある。アラスカに行ったときに教わったのだが、華氏0度は摂氏で氷点下18度にあたり、人間の血液が凍る温度だそうである。

また華氏100度は摂氏37.7度になり、アメリカなど華氏を標準に使っている国では、体温計も華氏表示になっていて、100度を超えたら冷やせといわれているらしい。このへんは摂氏よりもわかりやすい。平熱との境界線としても37度Cよりも100度Fのほうが実感に近い感じがする。

さらに華氏50度は摂氏10度に相当し、人間が寒いと感じはじめる温度で、季節の変わり目の目安になる気温ということができる。

こうして考えると温度の華氏には生活実感がある。実用的な面からしても、例えばインターネットでアメリカの天気予報をみると華氏表示になっているので、華氏感覚を身に付けておくと便利かもしれない。

今度アメリカに行ったときには、おみやげに華氏の体温計を買ってこよう。
ちなみに摂氏と華氏の換算は  F=1.8*C+32 です。

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