タイ・バンコク (17)
話は島々での体験、パリでの話、ニューヨークでのアルバイト、日本出てからま だバンコックで捕まっている私とか小林にはヘビイ過ぎて相づち打つのがやっとです。
相変わらず、松原氏は「がはは、はは」と笑いながら相づち打っています。話は パリ時代にまた戻ってきました。
「おれさ、親父高校時代に病気で死んだんだわ。それからお袋と二人になったんだけど、女は強えーは、高校卒業して大学までは、女手一つの苦労話よ。大学中退しちゃった俺も、苦労話なんて言ってちゃいけないけどな。昔気質の人だから な、ちゃんとがんばれたんだと思うけど。」
「へえー!」 としか言いようがありません。
「それでな、お袋も65過ぎたから体がまだ動く間にぷらぷらして帰ってこない息子の所へ言ってみようと思った訳よ。な、でな、もちろん英語なんか話せるはずないし、フランス語なんかもっと駄目。どうしたかと言ったら、フランス語と英語で首から提げる看板書いてくれと言ってきたよ。」
「私は息子の所へ行こうと思っています。住所はこちらです。もしこの場所がわ かる人がいたら教えてください。」
「これもそのまま書けばいいようなんだが、息子の所へと言う部分が恥ずかしくて私はここへ行くつもりです。と書き直したよ。ちょっとお袋には罪悪感感じたけど。」
「凄いのは本当にそのプラカードもって、飛行機と電車、車乗り継いでパリの俺の下宿に来た事よ。東京でさえ満足に歩いたこと無いのに。」
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